ガラス固化体の表面汚染発覚―受け入れ検査の結果について

『原子力資料情報室通信』第450号(2012/12/1)より

ガラス固化体の表面汚染発覚
―イギリスからの返還ガラス固化体受け入れ検査の結果について―

 2011年8月3日?9月15日にかけてイギリスからむつ小川原港に海上輸送された高レベル放射性廃棄物のガラス固化体76体は、現在受け入れ検査が行われている。このうち1基目の輸送容器に収納されていた九州電力分28体の検査で、3体のガラス固化体に表面汚染が確認されたと10月12日、日本原燃が公表した。

 返還されたガラス固化体は、「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」への収納前に発熱量、外観、寸法、重量、放射能量、閉じ込め、表面汚染の7項目の検査が行われ、健全性を確認することになっている。表面汚染検査は、スミヤろ紙テストの基準値(α放射能濃度0.4Bq/cm2、非α放射能濃度:4Bq/cm2)を超えたものについては、汚染低減措置(固化体表面の拭き取り)を何度でも行い、基準値以下になれば合格にする、という対応が取られている。

 9月21日に開始された検査の状況について、11月中旬に資料請求した結果を表に示す。3体のうち2体は数回の拭き取りが行われている。他の1体(B05144)は当初非α放射能が400Bq/cm2(基準値の100倍)という、非常に高い値が確認され、測定はすでに29回も実施されている。低減していた測定値が上昇している場合もあり、ガラス固化体から放射能が漏えいしている可能性が考えられる。

 この汚染事故は深刻だ。日本原燃、九州電力、原燃輸送が立ち会ってイギリスで行われた輸送前検査では、表面汚染は確認されていない。汚染が輸送中のわずか数十日の間に発生したとすれば、ガラス固化体の健全性そのものに大きな問題があることになる。例えば容器の溶接ミス、キャニスター表面の損傷など様々な原因が考えられる。製造工程全体の再調査など徹底的な原因究明と再発防止対策が急務だ。

(澤井正子)

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