福島第一原発:3月から9月末の総被曝線量は198.5人シーベルト

『原子力資料情報室通信』第450号(2011/12/1)より

福島第一原発
3月から9月末の総被曝線量は198.5人シーベルト
収束までにどれだけの被曝が労働者に課せられるのだろうか!?

 東京電力は11月20日、福島第一原発3号機の1階格納容器の点検扉付近で、毎時1600ミリシーベルト(mSv)の高い放射線量を計測したと発表した。ほぼ同地点で、14日には1300mSvを計測していた。格納容器からにじみ出た水による汚染と推測されているが、ロボットを用いた除染で線量が下がるまで人間は立ち入ることができない。依然として作業環境はきびしい。

 東京電力は10月31日、3月11日から9月30日までに緊急作業に従事した作業者の被曝線量を公表した(表参照)。この資料にもとづき総被曝線量(平均被曝線量×人数)を計算すると約198.5人・シーベルトという莫大な線量になった。2009年度の原発(発電用)全体の総被曝線量は82.08人・シーベルトである。今後、収束までにどれだけの被曝が労働者に課せられるのだろうか?

 3?6月に新規に福島第一原発内で仕事をはじめた作業者で連絡先不明者は、9月16日時点で65人だったのが、16人となった。「該当者なし」が10人、「連絡がつかず」が6人となっている。

被曝労働問題をめぐる省庁交渉

 私たち原子力資料情報室は、全国労働安全センターやヒバク反対キャンペーンなど多くの支援団体とともに、関連省庁と約月1回のペースで交渉を重ねている。

 交渉のポイントとして、①緊急時の被曝限度を100mSvから250mSvに引き上げた根拠を明らかにすること、②年間50mSvを超えても指導しないことにした根拠を明らかにすること、③「緊急作業」の判断基準を明らかにすること、④厚生労働省と経済産業省原子力安全・保安院との協議資料を開示することを求めた。また、⑤緊急作業に従事する労働者の被曝線量の緩和は許されない。個人の被曝線量の上限を上げて事故対応に当たらせることはできない、⑥未曾有の原発災害の危機であれば、日本全国の原発を停止し、必要な熟練労働者を福島第一原発に動員し、事故収束を最優先に取り組むべきであること、などを主張している。

 交渉の成果として、情報開示請求手続きにより、文書は徐々に開示されるようになった。また、緊急作業に従事する労働者数を過剰に見積もり、緊急時の被曝限度を現行の100mSvから250mSvに引き上げられた経緯と構図が明らかになった。

 小宮山洋子厚生労働大臣は11月14日、収束作業に携わる作業員の被曝限度を、政府と東京電力が工程表で年内終了を見込むステップ2の達成後、原則として通常時の「年間50mSv、5年で100mSv」に引き下げる方針を明らかにした。しかし、ステップ2達成後も例外として、原子炉の冷却や放射性物質放出抑制などの作業に携わっている作業者については現行の累積100mSvを維持する。作業上重要な知識や経験を持つ東京電力社員約50人は、来年4月30日までに限り250mSvを上限にするとした。

 厚労省は事故後、累積250mSvとしていた上限を、11月1日以降に働き始めた作業員については累積100mSvに変更した。しかし一方で、それ以前から働いている作業員については、250mSvのままにしている。

 私たちが要求している当面の課題は、①緊急作業に従事するすべての労働者に100mSvを適用すること、②「年間50mSv、5年間で100mSv」の電離放射線障害防止規則を遵守させること、③東京電力が提示している収束までの工程表第2ステージで必要とされる緊急作業従事者と被曝線量の試算と、日立、東芝から試算の根拠となるデータを公開させること―などである。

 年内にステップ2達成を急ぐあまり、労働者に無理な作業を強いて被曝させることはくれぐれも避けてほしい。

(渡辺美紀子)

 

 

原子力資料情報室通信とNuke Info Tokyo 原子力資料情報室は、原子力に依存しない社会の実現をめざしてつくられた非営利の調査研究機関です。産業界とは独立した立場から、原子力に関する各種資料の収集や調査研究などを行なっています。
毎年の総会で議決に加わっていただく正会員の方々や、活動の支援をしてくださる賛助会員の方々の会費などに支えられて私たちは活動しています。
どちらの方にも、原子力資料情報室通信(月刊)とパンフレットを発行のつどお届けしています。