『原子力資料情報室通信』391号短信(2007.1.1)

『原子力資料情報室通信』391号短信(2007.1.1)

※情報は執筆時点のものです

■六ヶ所再処理工場・拙速なアクティブ試験第2ステップ報告書提出

 日本原燃が六ヶ所再処理工場のアクティブ試験第2ステップに関する報告書『アクティブ試験中間報告書2?1』を12月8日に原子力安全・保安院に提出した。

 第2ステップは、PWR(加圧水型軽水炉)使用済み燃料集合体109体(約50トン)、BWR(沸騰水型軽水炉)使用済み燃料集合体57体(約10トン)を再処理したが、今回提出された報告書は、8?11月のPWR加圧水型軽水炉の燃料約50トン分だけとなっている。沸騰水型軽水炉の燃料約10トンを処理した11月以降の試験の結果については、追加で年内に報告する予定とされている。日本原燃によれば、第2ステップは2006年8月12日に開始され12月6日に終了したという。部分的とはいえ、終了のわずか2日後に国に提出されたことになる。

 日本原燃が報告書で安全を確認したとしているデータの多くは、公開に際してマスキング(白抜き)され、事業指定申請書に記載されている規制値さえ非公開となっている。わずかに公開された環境放射能測定データの中で、これまで検出されていなかったクリプトンが3000ベクレル/立方メートルの濃度で測定されたことが目をひく。

■女川1号炉・制御棒21本の表面にひび割れ

 定期検査中の東北電力・女川1号炉(沸騰水型炉、52.4万キロワット)において、11月5日?20日までにボロンカーバイド粉末型制御棒80本の外観点検をしたところ、21本で総数55箇所のひび割れが見つかった。ひび割れが見つかったのは制御棒上部にあるハンドルとさやとを溶接している箇所周辺で、ひびは最大8センチであると発表している。

 女川原発では、女川2号炉(沸騰水型炉、82.5万キロワット)において5月23日にハフニウム板型制御棒13本のうち5本のハンドルとさやの溶接部でひび割れが見つかったのに続き、10月12日までに2号炉のボロンカーバイド粉末型制御棒124本のうち5本の同様の箇所に溶接部をまたぐようにひび割れが起きているのがあきらかになっていた。

 東北電力は、女川1号炉でひび割れが見つかった21本のうち、4本では複数発生したひび割れが三角形の亀の甲状にひろがっているため、使用を中止し新品の制御棒と取り替える、と発表しているが、他の17本については継続して使用する。

■浜岡3号炉・再循環系配管の応力緩和工事の超音波検査記録偽造

 12月8日に原子力安全・保安院が明らかにしたところによると、中部電力・浜岡3号炉(沸騰水型炉、110万キロワット)において、2001年の第11回の定期検査期間中に実施された再循環系配管の超音波探傷検査記録の多数が同じもののコピーであることがわかった。

 浜岡3号炉では、当該の定期検査期間中に再循環系配管の溶接部に高周波誘導加熱(IHSI)による応力緩和工事を行なった。工事の前後に超音波探傷を行なっており、複製された記録波形はこの検査の記録であった。定期検査で点検対象となった18箇所の溶接部のうちの14箇所で行なった検査記録95枚のうち50枚が同じものであった。

 中部電力は、「検査は適切に行なわれたが記録を作成する際、工事前データからコピーしたもの」と根拠を示さず推定している。また、第12回定期検査時の超音波探傷検査の結果から、異常はないと結論し、原子力安全・保安院も追認している。

■大飯3号炉・原子炉上ぶた取り替えと配管検査作業員の被曝線量超過

 大飯3号炉(加圧水型炉、118万キロワット)で9月27日から始まった定期検査で原子炉容器の上ぶたを交換する作業が終了し、調整運転を開始したことを関西電力が12月6日に発表した。2004年5月に原子炉容器上ぶたのノズル溶接部にひび割れが発生し1次冷却材が漏れる事故が起きており、これまでは応急処置的につぎあて式の補修が行なわれていた。

 新たに取り付けられた上ぶたは、一体鍛造法でつくられ、ノズルの材質をインコネル600からインコネル690へと変更したほか、制御棒駆動装置のシール部を一体構造へ変えた。

 また、この定期検査中に行なわれた1次冷却材ポンプモータ配管点検作業で、11月1日、下請け作業員1人が当日の作業で計画された被曝線量である1日あたり0.80ミリシーベルトを超えて、1.19ミリシーベルト(午前0.22ミリ、午後0.97ミリ)の被曝をしていたことがわかった。この作業員は3人一組で、原子炉格納容器内Cループ室に入って、1次冷却材ポンプモータ冷却水配管の非破壊検査を実施する前作業として配管フランジ部表面塗装を除去する作業を行なっていた。

 作業場所の空間線量率は0.50ミリシーベルト/時と事前に計測されていたが、午前中に別の作業員が行なった2時間の作業での被曝線量が0.37ミリシーベルトであったため、放射線管理の担当者が2時間の作業をしても計画線量を超えないと判断していた。

■玄海2号炉・燃料集合体からの放射能漏れ

 11月14日から定期検査中の九州電力・玄海2号炉(加圧水型炉、55.9万キロワット)で、燃料集合体からの放射能漏れが12月12日までに見つかった。121体の燃料集合体の漏えい検査を行なったところ、1体で漏えいが起きていることが確認された。燃料棒被覆管の表面に小穴があいているものとみられるが、測定された放射能濃度や損傷の詳細はあきらかになっていない。

 定期検査に入る前の11月1日ごろから、一次冷却材中のヨウ素の濃度が高くなっているのがわかっていた。

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