原子力資料情報室声明:東京電力、福島第一廃炉推進カンパニー発足、 汚染水対策の展望を問う

NPO法人原子力資料情報室は、4月1日より東京電力の福島第一廃炉推進カンパニーが発足することを受けて、以下の声明を発表いたしました。


 

【NPO法人 原子力資料情報室 声明】 

東京電力、福島第一廃炉推進カンパニー発足、

汚染水対策の展望を問う

2014年3月31日

NPO法人 原子力資料情報室

 

 今年4月1日から東京電力は、新組織「福島第一廃炉推進カンパニー」を発足させ、福島第一原発事故収束作業の指揮命令系統・意思決定のプロセスなどを抜本的に見直すとしている。私たちは、東京電力及び政府に、この間続けてきた弥縫的な汚染水対策をやめること、そして、被曝労働者を重視した対策を行うことを強く求める。

 3月25日、政府と東京電力がかねてより申し入れてきた地下水バイパスの実施を、福島県漁業協同組合連合会が了承した。漁業者にとっては苦渋の中での選択であったことを忘れてはならない。地下水の建屋等への流入は放射能汚染水の増加の最大の要因であり、東京電力が発表している計画では、地下水バイパス、今年9月に稼動予定とされるサブドレン(揚水井戸)、本年秋の完工を予定する海側遮水壁(鋼管矢板)、2014年度の稼働を予定する陸側遮水壁(凍土壁)の併用により、建屋などへの地下水の流入を防ぐとしている。その観点からは、地下水バイパスの稼働は汚染水対策にとっては一歩前進と呼べることかもしれない。

 しかし、政府と東京電力は未だ、現に存在する汚染水の抜本的な解決策の糸口すら見いだせないでいる。そして、今後、汚染水問題が解決に向かうかについても、私たちは疑問視せざるをえない。

 汚染水問題の“切り札”とされてきた多核種除去設備ALPS(Advanced Liquid Processing System)でのトラブルが収まらない。また、敷地内で続発する汚染水漏えい事故は、収束する兆候も見られない。劣悪な労働環境・マニュアル等の不備に起因するヒューマンエラーによるトラブルも頻発している。汚染水問題の抜本的な解決は極めて難しい状況にある。

 本質的な問題は、東京電力のマネジメント能力の欠如と洞察力を欠いた技術観にあると私たちは考えている。東京電力は、当初、汚染水問題を軽視し、経費を惜しみ、対策を行わなかった。その後、対策を行う際も、当該対策が成功し、他のトラブルが起こらないことを前提としたため、問題が発生した際の対処において極めて稚拙なその場しのぎの対応に終始してきた。また、その不適切な対処のために、現場の労働者に虐待的ともいうべき過度の負荷をかけることが積み重ねられている。そのことは汚染水問題のみならず、その他の事故収束作業全てにおいて該当する。

 現在起きている、ベテラン労働者の被曝線量増加による解雇と、頻発するヒューマンエラーは、こうした弥縫策の結果である。

 私たちは「福島第一廃炉推進カンパニー」と政府には、こうした、弥縫策づくしの対応から速やかに転換し、トラブルが発生することを前提とした周到な計画を策定することを強く要望する。

 また、私たちは、政府に対して、①被曝労働者の健康保障・生活保障、②「収束宣言」後に新たに従事した労働者の長期健康管理、③事故処理作業の放射線管理と被曝低減の徹底、④被曝労働者の多重下請け構造の廃止、⑤線量限度超過後の仕事の保障、以上4点を責任をもって行うよう強く要望する。

以上