長尾さんの最終意見陳述書 判決は、5月23日

12月7日、長尾さんの原発労災裁判は結審しました。
判決は、5月23日午後1時10分から、東京地裁527号法廷にて
3/28判決の予定は延期されました

■長尾さんの最終意見陳述書

東京地方裁判所 御中

 長尾光明

1.私は、1977年10月から1982年1月まで、東京電力福島第一原子力発電所等において配管工事に従事し、大量の放射線被曝を受けました。1998年に第3頚椎と左鎖骨の2ヵ所に病的骨折が見つかり、多発性骨髄腫との確定診断を受けました。それ以後、抗がん剤などの治療を受け、身体のしびれ、耳鳴り、頭痛などに苦しみながらも、小康状態を保ってきました。ところが、今年の10月頃から右鎖骨辺りにも痛みが出てきました。調べてもらったところ、左鎖骨のときと同じように骨が溶け、骨髄腫ができていると聞きました。

2.私の多発性骨髄腫の原因は当時の放射線被曝にあります。
  千船病院の高橋哲也先生や兵庫医大の専門医に診てもらい、私が多発性骨髄腫であることが分かりました。阪南中央病院の村田三郎先生にも診てもらって、放射線被曝が原因であることを証明してもらいました。国においても、私が多発性骨髄腫にかかっていて、放射線被曝が原因であることが認定され、労災として認められています。

3.ところが、裁判では、東京電力がこれを不当に争い、清水一之医師がそのたくらみに手を貸し、私が多発性骨髄腫ではないと主張してきました。私を診察したこともない清水医師が私の病名を決め、はては外国の医師の威を借りてまでして、東京電力の責任回避のために協力したことは、病に苦しむ患者を助けるべき医師として失格だと思います。清水医師にそのような協力をさせた東京電力については、もっと許すことができません。
  私が働いていた当時に、アルファ核種という放射性物質が大量に放出されていたことを後で知りました。東京電力は長い間そうした事実を隠してきましたし、いまだに認めようとはしません。裁判における東電の姿勢は、自分たちに都合の悪いものは事実をまげてでも隠そうとするもので、情報隠しとまったく同じものだと思います。

4.原子力発電所での仕事は本当に苦しいものでしたが、私は精一杯働いてきました。その結果が、多発性骨髄腫です。もし原発で働くことがなかったら、今のような苦しみを背負うこともなかったと思うと、本当にくやしくてなりません。
  私は現在、病床にあって、法廷で意見を述べることはできませんが、裁判官におかれましては、日本の原子力発電所の暗闇を照らすような判決を下されることを切に願います。

■裁判の経緯

 長尾光明さんはベテランの配管工として、1976年から約4年間東京電力福島第一原発などで被曝労働に従事しました。それが原因で血液のがんである「多発性骨髄腫」を発症し、闘病中です。
2004年1月に福島県の富岡労働基準監督署が労災認定したので、すべての情報開示と完全な補償を求めて、雇用主だった石川島プラント建設や東京電力などに話し合いを申し入れましたが、会社は拒否しました。
そこで、2004年10月7日に東京電力に対し、「原子力損害の賠償に関する法律」(原賠法)にもとづいて、損害賠償を求める民事訴訟を提訴しました。
原子力発電所による被害は、「原子力損害賠償法」により、因果関係が認められれば電力会社が賠償義務を負うことになっています。「労災認定=因果関係あり」ですから、裁判が長引くはずがありません。
ところが東京電力は、因果関係はもちろん時効、損害金額、果ては「長尾さんは多発性骨髄腫ではない」と主治医の診断まで否定しました。
12月7日、原告側は最終準備書面を提出し、長尾さんの最終意見陳述書を読み上げました。東京電力の代理人は、「原発で働いて多発性骨髄腫になったと言っているのは原告だけです」と発言し、裁判は結審しました。
裁判の判決は、3月28日午後1時10分から、東京地裁527号法廷で。
3/28判決の予定は延期され、5月23日になりました

■長尾光明さんに関する『原子力資料情報室通信』の掲載記事
※バックナンバーは一部300円です

401号(2007年11月1日発行)
困難な日本の被曝労働者の実態―喜友名さんの労災と結審を迎える長尾裁判
渡辺美紀子(原子力資料情報室)
cnic.jp/120

384号(2006年6月1日発行)
被曝の危険性の説明なかった―福島第一原発訴訟で長尾さんが証言
氏家義博(長尾訴訟弁護団・弁護士) 

382号(2006年4月1日発行)
労災認定された長尾さんの多発性骨髄腫を東電が否定
4月6日、本人尋問の傍聴にぜひ参加してください!
渡辺美紀子(原子力資料情報室)

375号(2005年9月1日発行)
長尾原発労災裁判への国の補助参加に抗議しよう
川本浩之(よこはまシティユニオン/神奈川労災職業病センター)

372号(2005年6月1日発行)
放射線作業離職者に健康管理手帳を!
内山俊一(放射線作業離職者に健康管理手帳を!全国連絡会)

367号(2005年1月1日発行)
長尾さん被曝労働訴訟―多発性骨髄腫発症の因果関係を巡り全面的な争いに
渡辺美紀子(原子力資料情報室)

364号(2004年10月1日発行)
東電を告発する長尾原発裁判にご支援を!

363号(2004年9月1日発行)
労災保険と民事損害賠償について―
長尾光明さんの労災(多発性骨髄腫)認定と今後の裁判提訴について
川本浩之(神奈川労災職業病センター)

357号(2004年3月1日発行)
長尾さんに労災認定―切り捨てられてきた原発労働者の救済を!
渡辺美紀子(原子力資料情報室)

350号(2003年8月1日発行)
原発被曝労働者に発症した多発性骨髄腫を労災に認定せよ!!
―長尾さんの労災申請の意義―
村田三郎(阪南中央病院内科部長・検診センター長)

厚生労働省は、2003年10月に電離放射線障害の業務上外に関する検討会(座長:坂井邦夫・新潟大学医学部放射線科教授)をたちあげ、月1回のペースで検討した。3回目の12月11日の検討会で、長尾さんの多発性骨髄腫を業務上の疾病と結論を出した。
検討会で検討された内容の開示を求めたが、この多発性骨髄腫に関する疫学研究の文献レビューだけをホームページで公開した。