米印原子力協定の危険性:国際NGOネットワークが国際社会に対して警告

記者発表
2008年7月7日

米印原子力協定の危険性

国際NGOネットワークが国際社会に対して警告

 核兵器禁止条約を求める世界90カ国2000団体以上からなるNGOネットワーク「アボリション2000」の米印協定作業グループは、米印原子力協定に関する性急な決定は避けなければならないと表明している。

 これらNGOは、主要国政府に対して、「賛否の分かれるこの提案が核の保障措置制度をこれ以上害することがないようにするための措置をとり、また、核兵器の原料を作りうる技術の拡散を止めるための努力を積極的に行う」よう求め、さもなくば「インドの核軍備の増強を助長してしまうことになる」と警告した。

 インド政府は今週にも、自らが依存するところの左派政党の反対を無視して、国際原子力機関(IAEA)理事会に対して保障措置協定の案を回覧させる見通しである。そのことによって、インド政府は米印二国間の核協定(米原子力法の条項から「123協定」と呼ばれている)を実施に移すために必要な残された措置を実行しようとしている。それは、この保障措置協定のほかに、45カ国からなる原子力供給国グループ(NSG)が原子力貿易ガイドラインからインドを特別な例外として除外する措置をとることであり、最終的には、米議会が「123協定」の規定を承認しなければならない。

 2005年7月にインドのシン首相とアメリカのブッシュ大統領が共同声明を出してから「123協定」の文面が確定するまでに2年がかかり、それからすでに1年が経過した。これほどまでに遅れた後に今になってインド政府がIAEA理事会に保障措置協定案を出すという決定することは、国内または国際状況が変化したというよりは、シン首相の個人的プライドの問題という性格が強い。シン首相は、協定が実際に完結することよりもブッシュ大統領との約束を守ることを重視しているようである。協定賛成派も含め多くの分析者たちは、必要な措置がブッシュ政権のうちに完了することはないとみている。さらに、アメリカの次期大統領が協定を今のままの形で継続することを望むという保証はない。

 米印原子力協定は当初構想されたときから間違った協定であったが、以来その欠点はまったく改善されていない。今年1月に世界130のNGOがIAEAに提出した国際書簡に記された問題点のすべてが、今もそのまま残っている。その国際書簡の文面および署名者一覧は以下のURLからみることができる。
cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=601

 この協定は、インドが核不拡散条約(NPT)に加盟していないにもかかわらず核兵器国としての地位を獲得するということを意味する。そればかりかインドは、フルスコープのIAEA保障措置を受けるという非核兵器国としての義務も、核軍備撤廃のために誠実に交渉するという核兵器国としての誓約も負わないということになるのである。

 IAEAとNSGは、非現実的な政治的日程にあわせて性急な決定を下してはならない。IAEA理事会に参加している35カ国は、インドが要求している特別な条件というものがIAEA保障措置制度そのものの信頼性を崩すことになりうるということを考慮しなければならない。同時に、少数派政府が強い反対を押し切ることが正しいことであるかどうかも考えなければならない。NSGは、インドに特例を認めることが国際的な不拡散体制にいかなる影響を与えるかを考慮すべきである。これらはいずれも、性急な判断の許されない重要な問題である。

 IAEA理事会とNSG諸国は、最低条件として、核兵器をつくるすべての高濃縮ウランとプルトニウムの生産禁止のために長く続けられてきた国際的努力を強化すべきである。これら諸国は、米印協定の前提条件として、南アジアにおける兵器用核分裂性物質のこれ以上の生産を終了させることを主張すべきである。

連絡先
日本
フィリップ・ワイト
  アボリション2000米印協定作業グループ・コーディネーター
  03-3357-3800 原子力資料情報室) 
川崎哲
  ピースボート共同代表 (在G8サミット国際メディアセンター(IMC))

インド
Sukla Sen
National Coordination Committee Member, Coalition for Nuclear Disarmament and
Peace
アメリカ
Daryl Kimball, Director, Arms Control Association, Washington D.C.

参考:https://cnic.jp/english/topics/plutonium/proliferation/usindia.html