【連載】水道水のセシウム濃度調査 第6回 浄水場でセシウムは除去できているか

『原子力資料情報室通信』第526号(2018/4/1)より

【連載】水道水のセシウム濃度調査 第6回 浄水場でセシウムは除去できているか

本誌524号では、水道水と元になる河川水の放射性セシウム濃度がほとんど変わらなかった例を報告しました。今回は浄水場でどの程度セシウムが除去できているのかを考えます。
はじめに、一般的な浄水処理についてみていきましょう。東京都水道局は浄水処理を大まかに4つに分けて説明しています。比較的にごりの多い水に適し、広く用いられているのが「急速ろ過」です。にごりや細菌などを薬品で凝集・沈殿させ、上澄みを砂層にはやい速度で通過させてろ過する方法です。水質が良好で水質変化が少ない水は「緩速ろ過」で処理されています。ゆっくりとろ過池の砂層に水を通し、砂層の表層部に繁殖している微生物(生物ろ過膜)の浄化作用で水をきれいにする方法です。ほかに、精密ろ過膜などを用いた「膜ろ過」の処理や、きれいな原水の場合は「消毒のみ」があります(1)
アルカリ金属であるセシウムは水中で陽イオンになって溶け出しやすい特性がありますが、土壌の粘土粒子と結びつくと、酸などに侵されない限り、そこから分離しにくいことが分かっています。河川水中ではセシウムの多くが細かい土壌やちりと一緒に、にごり成分として存在しているようですが、水に溶けたイオンの形態や、不溶性の微粒子でも存在しているかもしれません。
厚生労働省の検討会(2)によれば、「放射性セシウムは水中で粒子に吸着した状態で濁質と同様の挙動をとりやすく、濁質の除去により高い除去率が期待できるものと考えられる」とされ、原発事故後に特別な浄水システムの導入はされていません。会議資料(3)では、活性炭処理で水中セシウムのおよそ9割が除去された実験室のデータや、浄水場での処理プロセスが進むにつれ、セシウム濃度が大きく低下するグラフが示されました。
事故直後の汚染の高い時期や、実験室ではそうなるのでしょうが、実際に水道水と原水の放射性セシウム濃度を比較したところ両者に大きな差がなかったという報告があります。ある論文(4)では、新潟、東京、大阪において水道水と原水の濃度を比較すると、除去率が30~32 %だったと報告されています。1972年の古い論文ですが、セシウム濃度は数ミリベクレル/キログラム (mBq/kg)の範囲で、現在の状況とよく似ています。また、福島原発事故後の調査(5)では、江戸川河川水(固形物の除去後)の濃度が8.3 mBq/kgだったとき、墨田区の水道水から7.9 mBq/kgが検出されたと報告されています。さらに、河川水と水道水のそれぞれの公的データ(6、7)の同時期のものを比較すると、浄水処理でセシウムがあまり除去できていないことが読み取れます(表)。
にごり成分に吸着した放射性セシウムが、凝集・沈殿・ろ過の過程でほどんど除去できるとすれば、水道水に残留するセシウムはイオン形態が主だと考えられますが、不溶性の微粒子の可能性も否定できません。(いわゆる“セシウムボール”が1粒でも混入していれば、もっと高い汚染レベルになるでしょう(8))。水道水を陽イオン交換樹脂に通して、含まれるセシウムがイオンかそうでないものか、将来的には調べてみたいと考えています。

(1) www.waterworks.metro.tokyo.jp/suigen/topic/26.html
(2) www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001g9fq-att/2r9852000001g9jp.pdf
(3) www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001eaf3-att/2r9852000001eaor.pdf
(4) www.jstage.jst.go.jp/article/jhs1956/19/6/19_6_334/_pdf/-char/ja
(5) harp.lib.hiroshima-u.ac.jp/pu-hiroshima/file/12383/20160628101020/seikan0869.pdf
(6) radioactivity.nsr.go.jp/ja/list/194/list-1.html

(7) www.env.go.jp/air/rmcm/result/moe_water.html
(8) www-pub.iaea.org/iaeameetings/cn224p/Session3/Igarashi.pdf

(谷村暢子)