【原子力資料情報室声明】柏崎刈羽原発の廃炉は不可避である -繰り返す東京電力の誤った判断-

2019年8月30日

NPO法人 原子力資料情報室

 原子力発電は安全性を満たすことができる。

 原子力発電は低廉かつ安定的な電気を供給できる。

 このように明言するのが、8月26日に公開された東京電力ホールディングス株式会社の文書である。2年余り前に櫻井柏崎市長が求めた、6・7号機の再稼働の条件として1~5号機にかかる廃炉計画を示すこと、に対する回答「柏崎刈羽原子力発電所の再稼働および廃炉に関する基本的考え方」に、上の2点を「確認します」と東京電力は書いた。

 新規制基準に合格したとしても、それは安全性を保証したものではない。田中俊一・前原子力規制員会委員長の言として広く知られている。東京電力は新規制基準に則って対策を実施することで、発電所の安全性を確保します、と言うが、確保はできないのだ。

 2015年の経産省のワーキンググループの計算結果は、原子力が「火力や再エネ発電より高くなることはない」としたが、現在はそうではない。原発の追加安全対策費、事故廃炉・賠償費、福島第一原発事故の損害賠償費、汚染水処理対策費など、何処まで高騰するか定かでない。原子力発電は低廉などとは到底言えない。

 日本が原子力発電に取り組んで以来、安全で安定で安価な電源という「神話」をあらゆる手立てを尽くして喧伝してきた結果、〈フクシマ〉がある。その反省が、今もって、東京電力には全く見られない。

 さる7月29日の柏崎市における県民集会で披露された資料「東京電力の改ざん・隠蔽の歴史」は、東京電力という会社の姿を如実に示している。2002年の配管・シュラウドのひび割れ隠し・検査偽装事件、中越沖地震におけるF-B断層隠し、福島第一原発事故におけるメルトダウン認識・非公表事件、2016年の防潮堤基礎杭の液状化で破損判明、2018年のケーブル洞道火災、2019年の誤報FAX等々、惨憺たる「実績」の歴史である。

 新潟県民も全国の世論も多数派は、6・7号機の再稼働はあり得ないと考えている。客観的に再稼働はできない。東京電力は判断と考えを改め、柏崎刈羽原発全機の廃炉に、真剣に取り組むべきである。それこそが東京電力の社会的責任を果たすことになる。

以上