核の役割縮小に向けたイニシアティブを歓迎し、新政策の早期確立を求める要請書

1月28日にICNND日本NGO連絡会の共同代表らは、岡田外相による先月の米クリントン長官らへの書簡などに関連し、『核の役割縮小に向けたイニシアティブを歓迎し、新政策の早期確立を求めます』と題する書簡を外相および政府に提出しました。


外務大臣 岡田克也様

核の役割縮小に向けたイニシアティブを歓迎し、新政策の早期確立を求めます

 大臣におかれましては、就任以来一貫して、核軍縮・不拡散を日本外交の重要課題の一つに位置づけ、強いメッセージを発信し続けてくださっていることに、心より感謝を申し上げます。

 とりわけ、昨年12月24日付けで米国のクリントン、ゲーツ両長官宛の書簡を出されたこと、またそれを公開されたことは、たいへん重要なイニシアティブでありました。私たちはこれを歓迎します。

 1月22日の会見のなかで大臣が指摘されていたように、米国のなかには、核抑止力に深く依存する日本の姿勢が核軍縮の足かせになっているとの見方が根強く、日本を口実に核軍縮を遅らせようとする動きがあります。これに対して、「核廃絶に反する政策を日本は求めているのではない」というメッセージを発信されたことは、きわめて重要かつ時宜をえたものであったと評価しております。

 私たちはNGOの立場から、日豪のイニシアティブである核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)に対して提言をしつつ、この動きに注目してきました。ICNNDは報告書のなかで、先制不使用をめざしつつ、そのための第一歩の措置として、核の役割を核使用の抑止に限定すること(「唯一の役割」宣言)、また、NPT非核兵器国への核使用を禁止すること(消極的安全保証)を勧告しました。とりわけ、米国が核態勢見直し(NPR)のなかで「唯一の役割」宣言を行うかが重要であると勧告し、エバンズ議長は「そのために日本の役割が大きい」ことを強調されていました。

 このような報告書発表の翌週に大臣がクリントン長官らに書簡を発し、これら核の役割の限定措置について「強い関心」を表明され、「協議を深めていきたい」と述べられたことは、まさにこのICNND勧告の趣旨に沿ったものであり、私たちはこれを高く評価します。米国をはじめとする諸外国のNGOからも、この書簡に注目する反応が届いています。

 その後1月26日には、「米国のNPRに対する我が国の対応に対する質問主意書」(浜田昌良参院議員、1月18日付)に対する政府答弁書が出されました。しかしその中では、残念なことに、従来の政府見解、すなわち「唯一の役割」への限定を支持しないとの立場が再確認されています。しかし同時に、ICNND勧告を「参考にしつつ、新たな政策提言を構築したい」とも表明されています。私たちはこの表明を、近い将来の政策転換への扉としてとらえ、期待をしたいと思います。

 米国のNPRが最終段階にあり、かつ、4月の核セキュリティ・サミット、5月のNPT再検討会議など、核軍縮・不拡散の重要課題が目前に迫っています。ペースをいっそう上げて、日本の政策の再検討をする必要があります。大臣のリーダーシップのもと、来月の早い時期までに、「核の役割の限定」を含む日本としての新しい核政策を確立し発表していただきたいと思います。私たちNGOは、そのような政策形成に対して情報提供など必要な協力を惜しみません。

 なお、上述の書簡および答弁書におけるもう一つの問題であった「トマホーク退役への反対」問題について、申し添えます。大臣は、「このような働きかけはなかった。仮にあったとしても私の考えとは明らかに異なる」として、旧政権下における働きかけを否定しました。また、政府答弁書においては、「詳細を明らかにすることは差し支えたい」として、実質的な回答がなされませんでした。しかしさまざまな報道が、具体的かつ詳細に働きかけの事実を指摘しています。

 大臣はかつて、過去の「核密約」問題を徹底調査するのは「外交に対する信頼感を取り戻すことで、外交の基盤というものを強めたい」からだと仰いました。まさにこの視点が重要です。これまで外務官僚によって核軍縮に対するどのような抵抗があったのか、その事実関係をしっかりと調査し、具体的に情報開示することが、今後の日本の核軍縮外交に対する内外からの信頼を高めることにつながります。この点についてのさらなる調査と情報開示を求めます。この方面においても、NGOは、情報提供などの協力を喜んでしたいと思います。

 日本が核廃絶への真のリーダーシップをとることを、世界が期待して注目しています。さらにペースをあげて、NGO・市民社会に開かれたプロセスで、新政策を確立されることを求めるものです。

2010年1月28日

ICNND・NGOアドバイザー
ピースボート 共同代表
川崎哲

ICNND日本NGO連絡会 共同代表
日本原水爆被害者団体協議会 事務局長
田中熙巳

ICNND日本NGO連絡会 共同代表
核兵器廃絶ナガサキ市民会議 副代表
朝長万左男

ICNND日本NGO連絡会 共同代表
日本反核法律家協会 理事
内藤雅義

ICNND日本NGO連絡会 共同代表
核兵器廃絶をめざすヒロシマの会 共同代表
森瀧春子