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菅直人内閣総理大臣
野田佳彦財務大臣
直嶋正行経済産業大臣

米国で計画されている新しい原子力プロジェクトに関連した財政リスクについて情報をご提供したく筆を執っております。米国における原子力発電所建設を巡る環境は非常に不確かなものです。世界の他の国々におけるよりずっとそうです。米国には、まさに世界に類を見ない膨大な再生可能エネルギー源がありますし、また、エネルギー利用効率向上によって得られる効果の潜在的可能性は、工業化の進んだ他のどの国よりも大きなものがあります。このような根本的な市場及び技術的リスクのため、米国における新規原発への投資は、石油燃料の価格を上げる気候変動対処法が制定されたとしても、極めてリスクの大きなものであり続けるでしょう。


米国における電力需要は、2年に亘る不況のため急落しています。わずか数年前に予測された電力需要の大きな伸びは――多くの新規原子炉建設計画の根拠となったものですが――いまや、10年あるいはそれ以上実現することはないでしょう。

同時に、米国には、電力需要に応えることのできる低コストの手段が他に多数あります。炭素面での限界のある環境においてもそういえます。米国には、新規建設の原子炉より相当安い再生可能エネルギー源が豊富にあります。米国における原子炉新規建設の見積もりコストが、2001年以来、4倍に伸びている一方で、再生可能エネルギー技術のコストは減少を続けています。現在、新規原子炉の予想電力コストは、キロワット時当たり12〜20セントとなっています。これに対し、エネルギー利用効率向上のコストは、キロワット時当たり3セント、風力及びバイオマスなどの幾つかの豊富な再生可能エネルギー源のコストは、5−10セントの範囲となっています。しかも、代替エネルギー源の利用可能性についての信頼度が高まっています。天然ガス資源についての最近の推定は、劇的に高まっていて、その価格は急落しており、低い水準に推移すると見られています。また、米国の産業部門では、コジェネの機会が豊富にあります。

一方、米国は、他の工業化の進んだ国々と比べ、人口当たりずっと多くの電力を消費していますから、利用効率の上昇の可能性が多く存在します。これは、電力需要をさらに抑えることになります。気候変動対処政策――炭素排出に代価の支払いを義務づける措置の導入の可能性もある――の結果、効率向上技術や再生可能エネルギーの利用促進について相当本格的な義務が課せられることになりそうです。これにより、非再生可能で大規模の新しいベースロード発電能力の必要が劇的に減少するでしょう。このような効果を持つのは、再生可能電力源基準、エネルギー効率向上源基準だけではなく、建築法規、電化製品効率基準、そして、省エネ改築用資金の増額などもあります。

米国における供給・需要サイドのリスクに加え、新しい原子炉の各種の設計が、重要な問題のため、どれも、米国「原子力規制委員会(NRC)」の最終的承認を得ていないという点があります。これらの原子炉の設計の承認が得られるまで、計画中の新しい原子炉は、NRCの「建設・運転一括許可(COL)」を得ることができません。この設計の問題は、許可過程を遅らせ、コストのさらなる上昇をもたらすことになるでしょう。

ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、新しい原子炉を「会社を賭ける」投資と呼んでいます。各種信用格付け機関は、新しい原子炉の建設を計画している幾つかの米国の電力会社の格下げを行っています。2003年、「議会予算局(CBO)」は、原子炉ディベロッパーへのローンの債務不履行の可能性について、「非常に高い――50%を優に超える」としています。CBOのもっと最近の推定は出ていませんが、2003年以来、新しい原子炉の建設に必要な条件は、さらに悪くなっています。

計画中の米国の原子炉プロジェクトの多くに日本の会社が関わっているため、これらが良い投資対象であるかのように見えるかもしれません。しかし、日本の会社の関わっているプロジェクトも、他の原子力プロジェクトと同じような遅延や設計問題、財政的困難に見舞われているというのが現実です。米国の電力需要の低減、原子力よりもやすい代替エネルギー源の豊富さ、そして、続いている設計問題などからすると、米国の新しい原子炉への投資は、要するに、米国の投資者にとってと同様、日本の投資者にとっても、損なものだと言うことです。

これらの非常に深刻な財政リスクについて米国の納税者や選挙で選ばれた人々に警告を発したのと同様、私たちは、日本の皆様にも、米国における新しい原子炉に対する投資について決定する前に、これらのリスクについて非常に注意深く検討するようお勧めします。

ご質問があれば、遠慮なく下記にご連絡下さい。
Kevin Kamps(Beyond Nuclear)
+1-301-270-2209 内線 1,
Michele Boyd (Physicians for Social Responsibility)
+1-202- 667-4260
敬具

2010年8月11日

署名者リスト

 


→ → 【資料】米国の原子炉建設計画の財政リスク問題(日本の関係する計画を中心に)(編纂:ケビン・キャンプス(ビヨンド・ニュークリア)

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