六ヶ所再処理工場 ガラス固化体再試験も失敗
『原子力資料情報室通信』410号(2008/8/1)より
『原子力資料情報室通信』410号(2008/8/1)より
六ヶ所再処理工場 ガラス固化体再試験も失敗
澤井正子
六ヶ所再処理工場のアクティブ試験は、中断した状態が続いている。07年末以降止まっていたガラス固化体製造試験は、半年ぶりの7月2日に試験が再開された。しかし試験開始12時間でまた事故が発生し、再び試験は止まってしまった。ガラス固化体製造技術が全く未熟であることが明らかになっている。7月末にはまた、13回目の工場竣工時期の延期が公表されることになる。
ガラス固化とは
六ヶ所再処理工場のガラス固化設備は、東海再処理工場で開発された方式を採用した。東海工場のガラス固化技術開発施設TVF(Tokai Vitrification Facility)のLFCM(Liquid Fed Ceramic Melter)法は、金属製ケーシングの中に耐火材でセラ ミック製溶融炉(約2m×2×2m)を設置し、炉に組み込んだ電極間で交流電流を流すことにより、溶融ガラス自体をジュール熱で発熱させ、ガラス温度(約1200℃)を保持する、というものだ。高レベル放射性廃液はガラス原料と共に溶融炉に供給される。
東海のLFCM法は大型化が容易であることや、炉の寿命がラ・アーグ再処理工場などの6ヵ月〜約1年に比べて比較的長い(約5年)、放射性廃棄物の発生も少ないという理由から採用された。六ヶ所再処理工場の溶融炉の大きさは、約3m×3m×3mで、TVFの容量の5倍の大きさにスケールアップしている。しかしTVFでは溶融炉の温度管理がうまくできないと、高レベル廃液に含まれる白金族元素(パラジウム、ルテニウムなど)などが溶融炉下部に堆積してしまい、廃液の出口をふさぐ、ガラス固化容器(ステンレスキャニスター)にうまく流下しないなどのトラブルが多数発生してきた。この溶融炉の持つ構造的な欠陥は、六ヶ所再処理工場に何の対策もないまま「技術移転」された。
白金族対策はない
試験中断から半年後の6月上旬、日本原燃は、『高レベル廃液ガラス固化設備の安定運転条件検討報告(以下『報告』)』を原子力安全・保安院に提出した。しかし『報告』では、白金族元素堆積の問題は何も解決されていない。そもそも国や日本原燃の説明のように、高レベル放射性廃液全体がガラスのマトリクスの中に取り込まれることは不可能で、白金族元素や他の不純物はガラスと混ざらない。そのため東海や六ヶ所工場では、温度管理という運転方法で白金族元素の堆積を防ごうとしたが結局トラブルを繰り返してきた。
『報告』が言う白金族元素堆積の対策と定運転条件とは、(1)廃液調整である。東海工場では廃液濃度を一定にするために「濃縮器」があったが、経済的理由から六ヶ所ではこれを廃止している。そのため変動する廃液濃度に応じて運転方法の変更が必要だが、結局それができない。そこでコールド試験で使用した白金族元素金を含まない低模擬廃液(劣化ウラン廃液)をわざわざ製造して高レベル廃液に混ぜ、廃液の濃度・成分を調整するという。そして(2)白金族元素堆積の兆候が現れたら放射性廃液を入れずガラス原料だけを投入する「洗浄運転」の実施、(3)それでもだめな場合は、炉内部に棒を挿入してかき混ぜる、(4)それでもだめな場合は全廃液を溶融炉から抜き出す、というのである。これが白金族対策と言えるようなものでなく、単なるその場しのぎ的対応でしかない。
本来の高レベル廃液以外の廃液を混ぜたり、ガラス原料だけの投入を行うことによって、六ヶ所再処理工場で製造される固化体の数は、全く予定できないことになる。また固化体の組成もバラバラとなり、長期的な貯蔵、最終的処分問題も含めて、「ガラス固化体とは何か」ということが改めて問われる事態だ。
再試験失敗
国のお墨付きをもらった日本原燃は、半年ぶりに7月2日12:00から再試験を開始した。1200℃に熱せられた溶融炉に高レベル放射性廃液が供給され、21:11には、ガラス廃液の流下が確認された。が、流下はすぐに止まってしまった。そこで運転員は一時的に流下を停止し、加熱温度が不足しているのだろうと予測し加熱電力値をあげて再度試みたが、ガラス廃液は流下せず、23:11に溶融炉の「液位高高」警報が発報、インターロックが作動し、試験は再度失敗して終わった。
日本原燃によれば、溶融炉の温度管理は問題なかったが、溶融炉とガラス固化体容器をつなぐ流下ノズルの温度が上がらず、ガラスが固まった可能性があるという。カメラによって、流下ノズル周辺にガラスのような付着物が確認されている。日本原燃は事故原因を究明のため、「結合装置(直径約40cm、高さ約1m)」全体を取り外して調査を行うとしている。現在、溶融炉には高レベル廃液1バッチ分を含む11バッチ分のガラス溶液が入ったままである。抜き出すことができずこの状態がいつまで続くのか全く不明で、再処理工場の危険性が改めて示された。
ガラス固化体製造工程で、あらたな問題が発生し、次々とトラブルが重なっている。六ヶ所のガラス固化工程は、実用規模の溶融炉で確証実験を行っているような状態と言えるのではないか。ガラス固化体が安定的に製造できることは、国の再処理事業許可の前提条件である。六ヶ所再処理工場にガラス固化体製造能力がないのであれば、アクティブ試験を含めた工場の稼働、事業許可の再検討が迫られるだろう。

日本原燃資料 添付資料−2(2/3)より
http://www.jnfl.co.jp/press/pressj2008/080711sanko.pdf
『原子力資料情報室通信』410号(2008/8/1)より
六ヶ所再処理工場 ガラス固化体再試験も失敗
澤井正子
六ヶ所再処理工場のアクティブ試験は、中断した状態が続いている。07年末以降止まっていたガラス固化体製造試験は、半年ぶりの7月2日に試験が再開された。しかし試験開始12時間でまた事故が発生し、再び試験は止まってしまった。ガラス固化体製造技術が全く未熟であることが明らかになっている。7月末にはまた、13回目の工場竣工時期の延期が公表されることになる。
ガラス固化とは
六ヶ所再処理工場のガラス固化設備は、東海再処理工場で開発された方式を採用した。東海工場のガラス固化技術開発施設TVF(Tokai Vitrification Facility)のLFCM(Liquid Fed Ceramic Melter)法は、金属製ケーシングの中に耐火材でセラ ミック製溶融炉(約2m×2×2m)を設置し、炉に組み込んだ電極間で交流電流を流すことにより、溶融ガラス自体をジュール熱で発熱させ、ガラス温度(約1200℃)を保持する、というものだ。高レベル放射性廃液はガラス原料と共に溶融炉に供給される。
東海のLFCM法は大型化が容易であることや、炉の寿命がラ・アーグ再処理工場などの6ヵ月〜約1年に比べて比較的長い(約5年)、放射性廃棄物の発生も少ないという理由から採用された。六ヶ所再処理工場の溶融炉の大きさは、約3m×3m×3mで、TVFの容量の5倍の大きさにスケールアップしている。しかしTVFでは溶融炉の温度管理がうまくできないと、高レベル廃液に含まれる白金族元素(パラジウム、ルテニウムなど)などが溶融炉下部に堆積してしまい、廃液の出口をふさぐ、ガラス固化容器(ステンレスキャニスター)にうまく流下しないなどのトラブルが多数発生してきた。この溶融炉の持つ構造的な欠陥は、六ヶ所再処理工場に何の対策もないまま「技術移転」された。
白金族対策はない
試験中断から半年後の6月上旬、日本原燃は、『高レベル廃液ガラス固化設備の安定運転条件検討報告(以下『報告』)』を原子力安全・保安院に提出した。しかし『報告』では、白金族元素堆積の問題は何も解決されていない。そもそも国や日本原燃の説明のように、高レベル放射性廃液全体がガラスのマトリクスの中に取り込まれることは不可能で、白金族元素や他の不純物はガラスと混ざらない。そのため東海や六ヶ所工場では、温度管理という運転方法で白金族元素の堆積を防ごうとしたが結局トラブルを繰り返してきた。
『報告』が言う白金族元素堆積の対策と定運転条件とは、(1)廃液調整である。東海工場では廃液濃度を一定にするために「濃縮器」があったが、経済的理由から六ヶ所ではこれを廃止している。そのため変動する廃液濃度に応じて運転方法の変更が必要だが、結局それができない。そこでコールド試験で使用した白金族元素金を含まない低模擬廃液(劣化ウラン廃液)をわざわざ製造して高レベル廃液に混ぜ、廃液の濃度・成分を調整するという。そして(2)白金族元素堆積の兆候が現れたら放射性廃液を入れずガラス原料だけを投入する「洗浄運転」の実施、(3)それでもだめな場合は、炉内部に棒を挿入してかき混ぜる、(4)それでもだめな場合は全廃液を溶融炉から抜き出す、というのである。これが白金族対策と言えるようなものでなく、単なるその場しのぎ的対応でしかない。
本来の高レベル廃液以外の廃液を混ぜたり、ガラス原料だけの投入を行うことによって、六ヶ所再処理工場で製造される固化体の数は、全く予定できないことになる。また固化体の組成もバラバラとなり、長期的な貯蔵、最終的処分問題も含めて、「ガラス固化体とは何か」ということが改めて問われる事態だ。
再試験失敗
国のお墨付きをもらった日本原燃は、半年ぶりに7月2日12:00から再試験を開始した。1200℃に熱せられた溶融炉に高レベル放射性廃液が供給され、21:11には、ガラス廃液の流下が確認された。が、流下はすぐに止まってしまった。そこで運転員は一時的に流下を停止し、加熱温度が不足しているのだろうと予測し加熱電力値をあげて再度試みたが、ガラス廃液は流下せず、23:11に溶融炉の「液位高高」警報が発報、インターロックが作動し、試験は再度失敗して終わった。
日本原燃によれば、溶融炉の温度管理は問題なかったが、溶融炉とガラス固化体容器をつなぐ流下ノズルの温度が上がらず、ガラスが固まった可能性があるという。カメラによって、流下ノズル周辺にガラスのような付着物が確認されている。日本原燃は事故原因を究明のため、「結合装置(直径約40cm、高さ約1m)」全体を取り外して調査を行うとしている。現在、溶融炉には高レベル廃液1バッチ分を含む11バッチ分のガラス溶液が入ったままである。抜き出すことができずこの状態がいつまで続くのか全く不明で、再処理工場の危険性が改めて示された。
ガラス固化体製造工程で、あらたな問題が発生し、次々とトラブルが重なっている。六ヶ所のガラス固化工程は、実用規模の溶融炉で確証実験を行っているような状態と言えるのではないか。ガラス固化体が安定的に製造できることは、国の再処理事業許可の前提条件である。六ヶ所再処理工場にガラス固化体製造能力がないのであれば、アクティブ試験を含めた工場の稼働、事業許可の再検討が迫られるだろう。

日本原燃資料 添付資料−2(2/3)より
http://www.jnfl.co.jp/press/pressj2008/080711sanko.pdf
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六ヶ所再処理工場 ガラス固化建屋でトラブル
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