タニムラボレター No.026 2014年 東京のハーブ

『原子力資料情報室通信』第484号(2014/10/1)より

 

 

 

 

 昨年9月、東京の多摩北部で採取した植物と土壌の放射能測定結果を取り上げました。空間放射線量が0.1μSv/h以下の地域でも、土壌の汚染が1キログラムたり1,000ベクレルを超えるポイントが存在することと、いくつかのハーブに放射性セシウムが含まれていることを報告しました。
 今年も同じ場所でハーブを採取し、放射能測定を行いました。ハーブは天日で乾燥させた後、ハサミで細かく切って測定容器に詰め、NaIシンチレーション検出器で24時間測定を行いました。試料の重量は50~200グラムでした。測定ではセシウム137と134の両方が検出されますが、ここでは半減期の長いセシウム137の濃度のみで比較します。
 1キログラムあたりの放射性セシウム137量は、昨年のミントは雨どい近くのものが17±1.6ベクレル、平地のものが12±0.6ベクレルでしたが、今年は平地のもので8±5.4ベクレルでした。ドクダミは11±0.9ベクレルから8±1.9ベクレルへ減少しました。そして、昨年は6±0.3ベクレル検出されたローズマリーは検出限界の3.8ベクレル以下という結果でした(表)。

表 東京多摩北部で採取されたハーブの放射性セシウム濃度

 セシウム137は半減期が約30年です。放射能の強さが30年で半分に、60年で4分の1、90年で8分の1になります。これから計算すると1年間で減る放射能は、たった2%程度になります。しかし実測値を見ると、ハーブに含まれるセシウム137はこの1年間で2~3割も減少しています。測定の不確かさや、作業のバラつきも考えなければなりませんが、減少率が大きい理由の一つに土壌に含まれる放射性セシウムの状態が変化していることが考えられます。セシウムイオンが土壌に固定される反応はゆっくりと進行することが知られていますが1)、これに関して、セシウム溶液と土壌を合わせて撹拌したとき、放置時間が長いほど、高温に置いておくほど、植物に吸収されにくい固定態セシウムの比率が増加すると実験で確かめられています2)。また、福島県で栽培したブロッコリー、キュウリ、コマツナの移行係数(作物中のセシウム濃度÷土壌中のセシウム濃度)は2011年~2013年の間に年々減少していることが報告されています。3)                 

(谷村暢子)

1)日本土壌肥料学会ホームページ http://jssspn.jp/info/nuclear/cs.html
2)農技研報B 36, 57-113 (1984)
3)福島県農業総合センター 野菜の放射性セシウム濃度の経年変化
 http://www4.pref.fukushima.jp/nougyou-