タニムラボレター No.027 米の全量全袋検査

『原子力資料情報室通信』第485号(2014/11/1)より

 

 

 

 

 千葉県にて合鴨農法でつくられた玄米の放射能測定を毎年おこなっています。2012年から開始して3年目となりました。汚染レベルは、基準値である1kgあたり100ベクレル(Bq)を大きく下回る値です。12年はセシウム137が2~3Bq/kg、セシウム134が1~3Bq/kg検出されましたが、13年はセシウム137と134が共に1Bq/kg以下に、今年はセシウム137がわずかに検出され134は不検出となりました(玄米1.8リットルを24時間測定)。年が経つほどセシウム濃度が減少しています。

 多くの人が米の放射性セシウムに高い関心を寄せていると感じられますので、今回は福島県の米の全量全袋検査の方法と結果を紹介します。全量全袋検査は福島県内で作られた全ての米の放射性セシウム濃度を検査する方針ですから対象は膨大です。30キロ袋で1,000万袋以上もあります。米を30キロ袋ごと測定できる専用の測定装置も開発されました。約200台の装置を用い、およそ1,700名もの検査員が検査にかかわっています。

図1 スクリーニングレベルの概念

 福島県公式チャンネルでは検査の風景を見ることができます1)。動画中で使用されている島津製作所製の検査装置「FOODSEYE」は検出器にBGO(Bi4Ge3O12、ゲルマニウム酸ビスマス)を用いています。測定下限値は検査時間5秒で20 Bq/kg以下、15秒で10 Bq/kg以下という驚くべき値です2)。測定画面には、スクリーニングレベルが76 Bq/kgと表示されていました。測定値が76 Bq/kg以下なら高い確率で100 Bq/kg以下になり、出荷可能と判定できるということです。値が高いほど誤差の小さい測定をしているといえます(図1)。

表1 福島県産米全量全袋検査 セシウム検出率

 公開された検査結果3)をもとに、セシウムが少しでも検出された割合を表にしたものが表1です。ほとんどの米が測定下限値未満(25 Bq/kg以下)という結果でした。13年は浜通りにおいて基準値を超える米が前年より多く見つかりました。農林水産省はこれが放射性物質の直接付着による汚染であることを示し4)、東京電力に対しがれき処理に伴う放射性物質の飛散防止対策の徹底を求めました。
 全量全袋検査の結果は誰でも見ることができます。ぜひ調べてみてください。

(谷村暢子)

1)福島県公式チャンネル「福島県産米の全量全袋検査風景」
2)島津製作所プレスリリース2012/05/22  
3)ふくしまの恵み安全対策協議会 
4)農林水産省「25年産米の南相馬市での基準値超過に関する調査結果」

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