核燃料サイクルとは

核燃料サイクルってなに?

核燃料サイクルとは、原子力発電所の燃料となるウラン鉱の採掘から、放射性廃棄物の処分までのプロセスを指します。
核燃料サイクルは大きく2種類あります。一つはオープン・サイクル、もう一つはクローズド・サイクルと呼ばれています。
使用済み燃料を再処理するかしないかが大きな分かれ目になっています。

オープン・サイクル

原子力発電所で使われた使用済み核燃料をそのまま処分するサイクルです。サイクルがつながっていないことからオープン・サイクル、ワンススルー、または使用済み燃料をそのまま処分することから直接処分と呼ばれています。

核燃料サイクルはウラン鉱山から始まります。ですが、鉱山で採掘されたウラン鉱石がそのまま核燃料に加工できるわけではありません。天然のウラン鉱石に含まれるウランは大きく核分裂するウラン-235が0.7%、核分裂しにくいウラン-238が99.3%に分かれているからです。多くの原子力発電所で使われている核燃料はウラン-235が3~5%必要なため、ウラン濃縮工場で濃縮されたあと、ようやく燃料に加工されます。

核燃料サイクルの各工程では多くの放射性廃棄物が発生します。

 

クローズド・サイクル

原子力発電所で使われた使用済み核燃料にはプルトニウムなどのウランよりも原子番号の大きな核種が生まれています(超ウラン元素)。使用済み核燃料からプルトニウムと使い終わったウランを取り出して、残る放射性物質をガラスで固めたり(ガラス固化体)、海や大気に放出することを使用済み燃料の再処理と呼びます。再処理によって取り出されたプルトニウムはウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料に加工されます。

再処理によって取り出されたプルトニウムとウランが再利用されることで、サイクルが閉じるため、クローズド・サイクルと呼ばれています

 クローズド・サイクルには通常の原発を使う部分的なものと、高速炉/高速増殖炉を用いたものの2通りがあります。

クローズド・サイクルを実現するためには、再処理工場、MOX燃料加工工場、高速増殖炉または高速炉が必要になります。

クローズド・サイクルに必要な施設

クローズド・サイクルを実現するには、高速増殖炉・高速炉、再処理工場、MOX燃料加工工場が必要です。

日本には、高速増殖原型炉もんじゅ、東海再処理工場とプルトニウム燃料技術開発センター、建設中の六ヶ所再処理工場、六ヶ所MOX燃料加工工場が存在します。

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高速炉・高速増殖炉

通常の原子力発電所では、主にウラン-235と熱中性子(低速中性子)が使われますが、高速炉・高速増殖炉ではプルトニウム-239と高速中性子が使われます。プルトニウム-239は熱中性子でも核分裂しますが、高速中性子の場合、核分裂時に出てくる中性子の数が熱中性子の場合よりも多いからです。

核分裂で出てくる中性子はほかの核物質に吸収されたりして、核分裂を起こしたり、他の核物質に転換したりします。高速増殖炉の場合、炉心の周辺に核分裂しにくいウラン-238が多く含まれるブランケット燃料が配置されます。ウラン-238は中性子を吸収すると、プルトニウム-239になるからです。燃料として使えなかったウラン-238などが高速増殖炉の中で燃料として使えるものに転換できます。

高速増殖炉があれば、燃料がどんどん増やせる。高速増殖炉が夢の原子炉と呼ばれた理由です。

高速増殖原型炉もんじゅ

日本は原子力開発初期から、高速増殖炉開発を押し進めてきました。しかし現実は厳しく、実用化目標は年を重ねるごとに遠ざかっていくばかりでした。

1983年に原子炉設置許可を受け、1992年には試験運転を開始した高速増殖原型炉もんじゅは、高速増殖炉開発の大きなステップになると期待されていました。しかし、1995年のナトリウム火災事故など相次いだトラブルから2016年の廃止決定までの24年間で稼働したのは僅かに5300時間、内、発電したのは883時間しかありませんでした。

一方、建設や維持にかかった費用は11,305億円(1980年度~2021年度)、さらに廃止措置に3750億円以上が必要になると試算されています。

使用済み燃料再処理工場

使用済み燃料の再処理工程は、原子力発電所から使用済み燃料を受け入れるところから始まります(貯蔵・冷却)。その後、燃料をせん断(細かく切り刻む)したうえで、中身を硝酸で溶かし、溶かせなかった燃料被覆管のせん断片などを分けます(せん断・溶解)。次に硝酸で溶かした溶液を油性の溶液と接触させ、ウラン・プルトニウムと核分裂生成物を分離します。さらに、ウランとプルトニウムも化学的性質を利用して分離します(分離)。ウラン溶液とプルトニウム溶液に分かれた後、それぞれの溶液に含まれる不純物を取り除き(精製)、ウラン溶液と、ウラン溶液とプルトニウム溶液を混ぜた混合溶液からそれぞれ硝酸を取り除きます(脱硝)。脱硝されて酸化物粉末となったウランと、ウラン・プルトニウムを混ぜた粉末は製品として保管されます(粉末貯蔵)。

再処理では、核燃料棒の中に収められていた放射性物質を切り刻んで取り出すので、こうした各工程からは様々な放射性廃棄物が出てきます。大半の核分裂生成物は高レベル廃液として回収され、ガラスと混ぜ固めたガラス固化体として保管されます。しかし、回収しきれない放射性物質は、そのまま海や大気に放出されます。

東海再処理施設再処理実績

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東海再処理施設

東海再処理施設は1971年に着工しました。当初計画は年間処理能力210トンでしたが、1981年の本格操業開始時には処理能力を140トンに変更しました。1997年には低レベル廃棄物アスファルト固化処理施設で火災・爆発事故を起こし、3年間運転を休止しています。
約31年間で再処理した使用済み燃料量は1,140トン。年間平均約37トンで、140トンの処理能力を達成した年は一つもありませんでした。

東海再処理施設の建設・維持に要した費用は7,965億円(1970年度~2018年度)、さらにガラス固化の技術開発に要した費用は1,302億円(1973年度~2019年度)でした。

東海再処理施設は2014年に廃止方針が決定しましたが、廃止措置完了まで約70年間、費用は9,870億円と見積もられています。

六ヶ所再処理工場

六ヶ所再処理工場は大型の商用再処理施設として計画されました。計画が発表された1989年には1997年に竣工する予定でした。年間処理能力は800トン、40年稼働が前提とされました。総再処理量は32,000トン、使用済み燃料に0.8%~1%のプルトニウムが含まれると想定すると、256トン~320トンのプルトニウムが回収される計算となります。

以来30年間以上の時間が経ちましたが、六ヶ所再処理工場はいまだ完成していません。完成延期の数は25回にも上ります。

その間、コストは大幅に上昇しました。1989年の時点では7,600億円だった建設費は2021年時点では3.13兆円、運転費や維持費などを含めた総コストは13.53兆円に上ります。