日本では、原子炉級プルトニウムのことを核兵器には使えないという主張が時々現れます。たとえば、財団法人日本原子力文化振興財団(現在は一般財団法人日本原子力文化財団)が文部科学省の委託事業として開設していた原子力教育情報提供サイト「あとみん」(2012年閉鎖)では、
原子力発電所で生まれたプルトニウムは原子爆弾に利用されることはありません。
と断言していました。
なぜ、使えないという主張が出てくるのでしょうか。それは、原子炉級プルトニウムでは、熱や中性子、ガンマ線の影響で、核兵器の設計や製造が複雑になるからです。
しかし、実際にはプルトニウムの組成に関係なく、核兵器は製造できます。
核兵器に関する情報は、核兵器製造につながってしまうので、あまり公表されません。でも兵器級でも原子炉級でも核兵器が作れることは、核兵器国アメリカの様々な文書が明らかにしています。
たとえば、米国エネルギー省(歴史的経緯から、エネルギーと核兵器安全保障を所管)の報告書(1997年1月)は
米国やロシアのような先進核兵器国は、近代的な設計を使えば、兵器級プルトニウムから製造された核兵器と大体同等の信頼性のある爆発威力、重さ、その他の特性をもった核兵器を原子炉級プルトニウムから製造することができる。と指摘しています。 原子炉級、兵器級の違いにかかわらず、核兵器は製造できるのです。
そのため、IAEA(国際原子力機関)は、同位体の違いに関係なく、プルトニウムの有意量(1個の核爆発装置の製造の可能性を排除し得ない核物質のおおよその量)を8kgとしています。