コラム「風車」2022年4月

ロシアによるウクライナ原発攻撃の狙いは何なのか。原発を破壊するのではなく、原発を手中に握ることだというのが大方の見方だ。

電力供給に占める原発の比率が大きければ大きいだけ、「人質」としての価値が高まる。交渉の材料に使えるし、敵の士気を低下させる効果も期待できるというわけだ。もちろん、大惨事をいつでも起こせると、脅迫にも使える(恐いのは、意図せずして脅迫のはずが現実となる導火線に事欠かないことだが)。敵に攻撃をためらわせる「盾」ともなるだろう。

38年前の1984年2月、外務省の委託研究で「原子炉施設に対する攻撃の影響に関する一考察」なる報告書が、日本国際問題研究所によってまとめられている。攻撃のシナリオとして➀補助電源喪失➁格納容器破壊③原子炉の直接破壊を挙げ、③は過酷な事態となるため被害の分析は困難とし、①の被害を上回る可能性が高いとして、②の被害想定を行なったものだ。ただし前書きでは「今日の近代社会において不可欠」な電力源であることを重視し、攻撃の効能を「心理的不安に基づく社会的混乱」「その国の総合戦力を低下せしめる」としているのが、現在の状況と重なって興味深い。

原発は大惨事を内包する施設としても、大電力源としても攻撃対象となる。いずれにせよ電力の安定供給を脅かす。