コラム「風車」2017年3月

「風車」2017年3月号

東芝による米WH社買収のツケが、東芝本体の消滅すらささやかれるまでにふくらんだ。11年前に買収が合意されたとき、本紙06年3月号で九州大学の吉岡斉さんは「勝算なし」と喝破している。

もっとも買収の無謀さは原子力ムラの人々からも公言されていて、先見の明を誇ることでもない。05年4月には、原子力OBの集まりである「エネルギー問題に発言する会」で、日本電機工業会原子力部の中川晴夫部長が、こう語っていた。「メーカーは、原子力産業が縮小するのに合わせて、自分も小さくして行かなければならず、その結果いろいろな問題がでてきますと言うのが本音ですが、現実これを言うのは難しい」。

そんなふうに行き詰まっていたところ、アメリカで原発復興の詐欺話にだまされて、東芝がWH買収に走ってしまう。原発ルネサンスが現実的でないことも、日本企業による米企業買収では相手先をコントロールできないことも、当時から指摘されていたというのに。

アメリカで着工までこぎつけたのは4基のみ。その建設費の超過が命取りになった。いまさらのように東芝の綱川智社長は言う。4基の受注が失敗だった、と。中国で4基を建設中、インドでは6基の受注内定というが、それらの受注も失敗と呼ばれるのは、そう遠い先のことではなさそうだ。