コラム「風車」2013年12月

「風車」2013年12月号

小泉元首相も脱原発デビューし、話題になっている。その割に現実政治への影響力が小さそうなのは残念だ。じんわりと効いてくるのを期待した。それにしても小泉さん、過去の悪行の罪一等を減じるにやぶさかではないが、自らの責任で決断できたときは黙していて、気楽な立場でというのは、やっぱりズルイ。

さて、小泉さんが脱原発の根拠に挙げたのは高レベル放射性廃棄物の最終処分場がないこと。お蔭で審議中の総合資源エネルギー調査会放射性廃棄物作業部会に、早く対策を示せと圧力が強まったという。結果として作業部会は、従来通り地層処分に固執し、国が処分場立地の前面に立つことを求める方向性であると11月28日、委員長が調査会の基本政策分科会に報告した。従来との違いは、科学的に適地だと示すとしたことだ。

慌ててまとめた方向性だけに、立地選定プロセスは従来のまま、文献調査→概要調査→精密調査と進むことにしている。科学的に適地だとした後で、候補地としてまったく不適でないかどうか文献調査をするという逆立ちプロセスだ。すなわち文献調査とは地元に交付金を落とすためだけのものだと、自ら白状してしまった。

科学的見地なるものの不確かさは、指摘するまでもない。廃棄物の後始末は、けっきょく一歩も進まないだろう。