「風車」2013年10月号
9月19日に福島第一原発を視察した安倍首相は、同原発5、6号機の廃炉を決定するよう東京電力に要請した。東京電力は、年末までに判断すると同日、コメントを発表した。
首相も東電も福島第二原発についてはなお黙りを決め込んだが、30日の衆議院経済産業委員会で茂木経産相は同原発も廃炉とされるべきことを示唆した。年末までに判断するというのなら、第二原発1~4号機の廃炉もきちんと決めるべきである。
電力会社が廃炉に踏み切れない理由の一つが、廃炉を決めた途端に、減価償却が済んでいない資産の残存簿価や廃炉費用の積み立て不足金を一括で費用計上する必要があることだった。巨額の特別損失が発生するのを避けるために、後送りしてきたのである。そこで経産相の諮問機関である総合資源エネルギー調査会のワーキンググループは9月30日、「対応策」を決定した。
「円滑かつ安全な廃止措置」を電力会社に行なわせるためとして、会計ルールの原則をあえて踏み外し、運転終了後も主要設備の減価償却や廃炉費用の積み立てができるようにしたのだ。しかし、本当に廃炉を促すしくみになっただろうか。それには不十分なルールにとどまっている。
責任逃れを許さない一方、早く廃炉にしたほうが得になる「対応策」を本気で考えたい。