コラム「風車」2017年10月

コラム「風車」2017年10月

千葉地裁判決に驚いた。海抜10mを超える津波について、遅くとも2006年までに「発生し得ることを予見できた」と言いながら、回避措置を採ったとしても「本件事故を回避できなかった可能性もある」から、措置を講じなかった国に責任はないという。

苦し紛れの責任回避措置と言うべきか。東京電力にも、責任はないこととなる。そんな理屈が通るなら、本件すなわち東京電力福島第一原発事故に限らず、あらゆる事故の責任が問えなくなりそうだ。確かに結果として「回避できなかった可能性もある」にせよ、回避措置を回避してよいわけがない。

東京電力では、具体的にリスクを認識し、海抜10m盤の敷地の上にさらに10mの防潮堤(計20m)を設置する計画をつくっていた――と、同電力経営幹部らの告訴から強制起訴・公判に至る運動は明らかにしている。経済性を優先して計画を握りつぶした責任は厳しく問われなくてはならない。

なお付言すれば、本来は防潮堤を設置するより廃炉とすべきだった。その回避措置なら、回避の可能性は格段に高まったはずだ。浜岡では海抜22m、女川では29mと防潮堤の高さを競っているが、そんなおぞましい対策で、もともと建ててはいけなかった場所に、建ててはいけないものが建っていてよいとする考えこそが誤りだろう。