コラム「風車」2019年5月

日本経済団体連合会(経団連)が4月8日、「日本を支える電力システムを再構築する」と題した提言書を公表した。原子力については「継続的かつ安全に活用していくというメッセージを明確に発信する必要がある」と政府に求めている。

「リプレース・新増設を政策に位置づけるべきである」とし、さらに60年超運転、小型炉、高速炉、核融合の開発、高温ガス炉での水素製造まで謳いあげる原子力活用の大盤振る舞いだ。

ただしそれらは、よく錦の御旗に掲げられる「エネルギーの安定供給」のためではなさそうだ。提言書の随所で繰り返し反復強調されるのは、電力需要の伸び悩み、減少である。需要の拡大が見込めなければ投資も拡大できない。「電力投資は、その本来の規模の大きさとも相まって、例えば設備メーカーへの関係機器の発注等、経済活動を通じて広く社会に波及していく」というのにだ。「最終的には、労働サービス等を提供する国民にも渡ることになる。エネルギー・電力政策のみならず、我が国の経済成長、とりわけ地域経済活性化の観点からも重要である」というのにである。

そこで電力投資を無理やり促すための起爆剤として、投資額の大きい原子力の活用が打ち出されているらしい。何のことはない、「経団連を支える電力システムの再構築」なのだ。