六ヶ所再処理工場は高々10%操業、40年で3,200トン処理に留まる!  (11月号掲載記事)

長沢啓行(若狭ネット資料室長、大阪府立大学名誉教授)

六ヶ所再処理工場は竣工時期が2年半延期されましたが、アクティブ試験で汚染された「レッド・セル」内は耐震補強工事が困難なため、設工認審査で不合格になる可能性が高いと言えます。仮に、2027年度以降に操業できたとしても、英仏保管プルトニウムによる国内プルサーマル実績に基づけば、せいぜい10%程度の操業に留まり、40年間に3,200tU、六ヶ所再処理工場内プール貯蔵量2,968tUをやや上回る程度しか処理できません。いずれにせよ、原発サイト内の使用済燃料16,720tUのほとんどが再処理できないまま「核のゴミ」になる運命にあるのです。

プルサーマル実績が制約

これは、原子力委員会が「余剰プルトニウムを持たない」との国際公約から「プルサーマルの着実な実施に必要な量だけ再処理」を認可する方針だからです。

 国内でプルサーマル実績があるのは、高浜3・4号、伊方3号、玄海3号の4基で、いずれも加圧水型原発です。福島第一3号はわずか半年で炉心溶融事故を起こしたため「実績」には入りません。MOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料は通常、「原子炉内装荷-13ヶ月運転-3ヶ月定検」の16ヶ月のサイクルを3回繰り返して使用済になります。途中で新MOX燃料が装荷されると、それも3サイクル後に使用済になります。

年平均で高々10%の操業

高浜3号の例では、MOX燃料の装荷体数(括弧内は新MOX燃料の装荷体数)は、8体(8)-24体(16)-28体(4)-20体(0)-20体(16)-16体(0)-16体(0)と推移しています。7サイクルで44体、1.900tPu(全プルトニウムのトン数)が消費されています。1サイクル当りでは0.271tPu、16ヶ月/サイクルで換算すると0.204tPu/年になります。

同様に、高浜4号は36体の7サイクルで1.516tPu、伊方3号は21体の6サイクルで0.831tPu、玄海3号は36体の5サイクルで1.478tPuを消費し、年換算ではそれぞれ0.162tPu/年、0.104tPu/年、0.222tPu/年になります。

4基で合計0.692tPu/年ですが、これは六ヶ所再処理工場のフル操業で回収されるプルトニウム量6.6tPu/年(電気事業連合会発表)の10%程度にすぎません。

実際には、定検期間が延び、事故や故障で止まり、運転差止め仮処分や新規制基準審査で長期間止まりました。伊方3号や玄海3号は新MOX燃料切れで、今はプルサーマルを中断しています。これらを考慮すると、2009~2024年の15年間に4基で5.725tPu、平均0.382tPu/年にすぎず、六ヶ所再処理工場は平均6%弱しか操業できないことになります。つまり、先の「10%」は途切れなく16ヶ月のサイクルでプルサーマルが続くと仮定した「最大値」なのです。

状況は今後も変わらず

高浜3・4号では16体3サイクルでプルサーマルを継続中ですが、中断中の伊方3号と玄海3号では、英仏プルトニウム所有権交換で新MOX燃料を強引に調達し、2027年度以降から再開する計画です。この場合でも、4基によるプルトニウム消費量は0.698tPu/年に留まり、これまでの実績0.692tPu/年とほぼ同じです。

沸騰水型原発ではメドが立ちません。最大のプルトニウム所有者=東京電力は再稼働自体が困難で、プルサーマル原発も未定です。中部電力(浜岡4号)、日本原電(東海第二、敦賀2号)、東北電力(女川3号)は再稼働の見通しがありません。中国電力(島根2号)のプルサーマルは、実施できても、四国電力と同程度です。

MOX燃料費はウラン燃料費の10倍と高く、仏MOX加工工場は品質欠陥で1/3操業を余儀なくされ、プルサーマル実績が伸びないのです。六ヶ所再処理工場では条件がより悪いと言えます。

(詳細は、「若狭ネット」で検索し、ニュース「若狭ネット第199号」のpdf文書をご覧下さい)