コラム「風車」2009年7月

「風車」2009年7月号

経済産業省が「原子力発電推進強化策」を発表した。そんなものを出さなくてはならないほど原子力発電の推進は行き詰まっている、と自ら明らかにしたわけだ。

そして、もう一つ明らかにしたのは、原子力安全・保安院が原発推進行政から独立していないことである。同院は、経済産業省の「外局」である資源エネルギー庁に属する「特別の機関」と位置づけられている。資源エネルギー庁が原子力推進行政を担当し、原子力安全・保安院は規制行政を担うが、推進行政の下に置かれているのは独立性に問題あり、と以前から批判が絶えなかった。

これに対し保安院では、「業務についての報告は資源エネルギー庁長官にでなく、経済産業大臣に直接行なっており、推進機関と独立している」と反論していた。しかし、その経済産業省が「原子力発電推進強化」を掲げるのだから、反論も空しい。「強化策」の中には「科学的・合理的かつ実効ある安全規制に向けて、必要な取組を実施する」と、保安院がなすべき仕事もしっかり書き込まれている。

いや、同省が原発推進なのは、いまさら言うべきことでもないか。現に原発の各地元自治体はこぞって「経済産業省からの分離・独立」を求めていたのだった。とまれ言いわけはまったく通用しなくなった。分離・独立論に追い風となりそうだ。