『原発事故! 事故が起きて何が変わったか、変わらなかったか』

原発事故! 事故が起きて何が変わったか、変わらなかったか

西尾漠/著
発行:七つ森書館
定価:4,500円+税

まえがき
『原子力・核・放射線事故の世界史』(2015年)、『日本の原子力時代史』(2017年)と本書を合わせて三部作の趣きとなったが、当初から意図したものではない。ひたすら多くの事故例を並べた『原子力・核・放射線事故の世界史』の後で、思いがけず43年間の原子力ウオッチングの記録を『日本の原子力時代史』としてまとめさせてもらった。両者をつなぐものがつくれないかと考えたのが本書である。典型的な文系人間だから、事故を理系の論理で説くことはできない。文系のほうにひきつけるといっても、事故に社会的な意味を与えるだけの能力はない。事故にからんだ話題を備忘録よろしくひろってみたら、こんな本になった。

書けるかどうか、資料を漁ることから始めた。国会図書館はもとより、福島や茨城、福井の図書館にも足を運んだ。いや、それより原子力資料情報室の手持ちの資料や『はんげんぱつ新聞』に載った記事こそが、素材の宝庫だった。それらを読み返すのは、実に楽しい作業だった。しかし、なかなか書き出すところまでいかない。

そしていざ書き始めてみると、面白いものを見つけたと思った資料を読者もそう受け取ってくれるか、どんどん自信がなくなってくる。そんな気持ちを何とかごまかしながら、ともかくも書き上げた。あとは読者の審判を待つばかりである。なお、執筆について下記の点にご留意いただければさいわいである。

【目次】
Ⅰ.事故の教訓は1950年代から
原発が生まれたときから、事故は起きていた。そこで得られたはずの教訓は、生かされることがなかった。
1952年 カナダ NRX炉暴走・化学爆発【国際事故評価レベル5】
1957年 旧ソ連 ウラルの核惨事【国際事故評価レベル6】
1957年 イギリス ウィンズケール1号炉燃料溶融【国際事故評価レベル5】

Ⅱ.事故が地元の意識を変えた
日本の原発でも、事故は頻発する。それらがすぐに通報されず時に隠される事態に地元自治体は、安全協定の締結・強化を求めた。
1963年 日本 原研再処理試験室で火災・爆発
1967年 日本 東海原発で火災による死傷事故
1970年 日本 敦賀原発で燃料棒破損
1971年 日本 福島第一原発2.5レム事件
1972年 日本 美浜原発1号機蒸気発生器細管損傷
1973年 日本 美浜原発1号機燃料棒折損

Ⅲ.事故で変わる原子力行政
規制も推進の一部で、その名に値しない安全審査。そんな原子力行政に批判は集中した。
1974年 日本 原子力船「むつ」放射線漏れ
1975年 アメリカ 米ブラウンズフェリー原発1号ケーブル火災

Ⅳ.安易な事故対策は失敗する
事故のたびにいつも聞かれる「反省」と「対策」。それでも同じ過ちが、何度も繰り返される。
1979年 アメリカ スリーマイル島原発2号燃料溶融【国際事故評価レベル5】
1981年 日本 敦賀原発放射性廃液流出
1986年 アメリカ セコイア燃料六フッ化ウラン放出事故

Ⅴ.事故に終わりなし
放射能災害の被害は、時間とともにむしろ拡大する。事故のあと始末にも終わりは見えない。
1986年 旧ソ連 チェルノブイリ原発4号出力暴走【国際事故評価レベル7】
1986年 アメリカ サリー原発2号給水配管破断
1987年 日本 敦賀原発1号出力異常
1988年 アメリカ ラサール原発2号出力発振

Ⅵ.事故が「原発銀座」の怒りを呼ぶ
原発がどんなものかわからないうちに初号機が建設され、増設によって林立することになった福島や福井。事故まで認めたわけではない。
1989年 日本 福島第二原発3号再循環ポンプ部品破損
1991年 日本 美浜原発2号蒸気発生器伝熱管破断【国際事故評価レベル2】
1992年 日本 福島第二原発4号原子炉内に針金
1992年 日本 福島第一原発2号でECCS作動

Ⅶ.今に続く事故隠しの「どうねん体質」
動力炉・核燃料開発事業団の相次ぐ事故と事故隠し。名称や体制の衣替えで何も変わらず、税金の無駄遣いが漫然と続いてきた。
1995年 日本 高速増殖原型炉「もんじゅ」ナトリウム漏洩・火災【国際事故評価レベル1】
1997年 日本 東海再処理工場アスファルト固化体火災・爆発【国際事故評価レベル3】

Ⅷ.福島原発事故は、事故が予言していた
福島原発事故は、多くの識者に予言されていたと言われる。それより国内外の事故こそが、早くから予言していた。
1999年 日本 志賀原発1号臨界事故【国際事故評価レベル2】
1999年 日本 敦賀原発2号で1次冷却水漏れ
1999年 日本 JCO核燃料工場臨界事故【国際事故評価レベル4】
1999年 フランス ルブレイエ原発高波被災【国際事故評価レベル2】

Ⅸ.事故の軽視が新たな事故を準備する
周辺機器だから二次系だからと軽視し、保守管理を軽視してきたツケが、いよいよまわってきた。
2002年 日本 東京電力ひび割れ隠し
2002年 日本 美浜原発3号機一次冷却水漏れ
2004年 日本 美浜原発3号機2次系配管破断【国際事故評価レベル1】
2006年 日本 浜岡原発5号機・志賀原発2号機タービン大破損

Ⅹ.防げなかった原発震災
原発事故と自然災害との複合災害が警告されてきた。先触れとなる現実もあった。それなのに福島原発事故を起こしてしまった。
2007年 日本 柏崎刈羽原発地震被害
2008年 アメリカ ドレスデン原発3号機制御棒誤引き抜き
2011年 日本 福島第一原発1~4号炉心溶融・水素爆発【国際事故評価レベル7】

索引
事項索引
施設名索引
人名索引
組織名索引