コラム「風車」2008年8月

「風車」2008年8月号

原子力安全・保安院は6月24日、原発の定期検査の間隔延長をふくむ新たな検査制度の導入に向けた関連省令の改正案をまとめ、意見公募の手続きを行なった。現行では13ヵ月以内を原則としている間隔を、原子炉ごとの評価により18ヵ月以内、さらには24ヵ月以内に延長できるようにするものである。

美浜3号事故、不正総点検、相次ぐ地震の中での提案に反発を強める立地自治体の説得に時間をかけてきたが、いよいよ強行の態勢に入った。それにしても「地元側が『現行の13ヵ月でなくても安全なのか』と問えば、経済産業省原子力安全・保安院は『現行制度にも科学的根拠はない』と異例の“自己否定”で反論」(7月7日付日経産業新聞)とは、余りといえば情けない。

この間隔延長を急ぐのは、世界の各国と比較して低すぎる原発の設備利用率を引き上げるためだと言われる。仮に原発の寿命を40年、検査期間を2ヵ月とすると、13ヵ月間隔では設備利用率が最大87%なのに対し、24ヵ月間隔なら93%になる。

しかし日本の原発が満足に動かないのは、検査制度に理由があるのではない。頻発する事故、不正の発覚、耐震設計の誤りに起因する地震被害、点検修理の長期化こそが、利用率を下げている主因ではないか。

検査制度をうんぬんする前になすべきことがあるだろう。