コラム「風車」2007年9月

「風車」2007年9月号

『エネルギーフォーラム』8月号が「原子力立国に『死角』はないか!?」と特集を組んでいる。そのなかで日本エネルギー経済研究所戦略・産業ユニットの村上朋子原子力グループリーダーが「『日の丸原子力』に勝算はあるか?」を論じていてなかなかに興味深い。

小見出しを順に並べていくと「原子力『回帰』の風潮は高まるが…」「『市場は拡大する』は信じられるか?」「原子力新設を見る厳しい目」「投資は原子力よりも再生可能エネへ」と続き、「着実にものづくり技術を継承すべき」と締めくくられる。ことわるまでもなく原子力に批判的な論文ではなく、実体の疑わしいムードに流されるなという現実的な提言だ。

「日本のプラントメーカーが予測するほどには世界の原子力市場は拡大せず、仮にしたとしても日本のメーカーが入る余地はそれほど多くはないだろうと推定せざるを得ない」ことを冷静に論証した同論文から電気新聞の連載「興隆――動き出す米国原子力市場」に目を転ずると、タイトルに反して「十分な融資保証がなければ原子力プラントをつくらない」との米電力会社首脳の発言が紹介され(8月20日付)、様々な課題の山積で「市場の行方次第で日本企業は潤いもすれば打撃も受ける」とあった(同22日付)。

跳ね上がったウラン価格も、下落に転じている。