末田一秀(編集長)
6月19日から7月14日までスイス・ジュネーブで国連人権理事会第53会期が開催されている。会期中の7月4日には、昨年実現した国内避難民の人権に関する国連特別報告者ヒメネス・ ダマリー氏の訪日調査結果も正式報告されることになっている。また、作業部会が1月31日に行った日本の人権状況に関する普遍的定期的審査(UPR審査)結果も採択される。
UPR審査は、全ての国連加盟国の人権状況について相互に審査を定期的に行う制度で、日本が審査を受けたのは今回で4回目である。2017年の3回目の審査では、移住労働者、女性、LGBT、在日韓国・朝鮮人等への差別や慰安婦問題など多岐にわたる217項目の勧告を受け、うち4項目が福島事故の被災者に関することで、支援提供を継続すること、国内避難民に関する指導原則を適用することなどであった。
今回も300項目の勧告が行われ、「繰り返し指摘されている課題も含め、多くの国から勧告を受けたことは極めて重いと言わざるを得ない」と日弁連は会長声明を発している。
福島関連の勧告は16項目であり、うち10項目が前回なかった汚染水海洋放出に関するものだ。「健康被害や環境への悪影響を最小限に留める核廃棄物の貯蔵方法や海洋放出の代替案の研究、投資、活用を強化すること」(サモア)、「あらゆる汚染廃水や物質の放出について、安全性に関するさらに納得のいく科学的根拠を提供せずに、福島原発からいかなる放射性汚染水及び廃棄物も太平洋に放出投棄しないこと」(バヌアツ)、「太平洋諸島フォーラムの独立した評価による許容判断がされない限り、太平洋に放射性廃水の放出計画を停止すること」(マーシャル諸島)などである。
これまで日本政府は審査結果の多くを受け入れると約束しながら、指摘された問題を改善する手立てを打たないということを繰り返してきた。今回の勧告に対する日本政府の態度は7月10日に回答されるが、汚染水に関して、これまでの慰安婦問題などと同様に勧告を拒否することはできないであろう。勧告を支持するのであれば、少なくとも太平洋諸島フォーラム(PFI)の独立した評価が出る必要がある。国は昨年6月から本年2月までPFIへ計4回説明会を行い、6月7日に2回目の対話をオンラインで行っている。しかし、今後も対話を継続していくことで一致した段階に過ぎない。国連人権理事会勧告を無視して放出を強行することは許されない。(6/26記)
はんげんぱつ新聞2023年7月号掲載記事
汚染水問題のUPR勧告に日本政府が態度表明
国連人権理事会UPR(普遍的定期的審査)において、汚染水海洋放出に関して多くの勧告がなされたことを報告した。勧告それぞれに対して態度表明が求められており、総数300の勧告に対し「フォローアップを受け入れる」が180項目、「部分的に受け入れる」が26項目、「留意する」が58項目、「受け入れない」が36項目であった。
汚染水に関してはいずれも「留意する」であり、日本政府は「政府の方針として太平洋諸島フォーラムを含む国際社会に対する情報提供を、十分なデータを伴って、科学的根拠をもって透明性ある形で行う。ALPS処理された水の安全性に関するすべてのデータは東京電力のウェブサイトで得ることができる。希釈される前のALPS処理された水に含まれる放射性核種は再分析されており、データの信用性はIAEAのレビューによって裏付けられる」などとコメントしている。
はんげんぱつ新聞2023年8月号掲載記事