やっぱりお粗末「エネルギー基本計画」

やっぱりお粗末「エネルギー基本計画」

2014年4月11日

西尾漠(原子力資料情報室共同代表)

 

 4月11日、新しい「エネルギー基本計画案」が、やっとのことで閣議決定された。『原子力資料情報室通信』2014年2月号の「エネルギー基本計画のお粗末」に書いたように、同「計画」の原案である「エネルギー基本計画に対する意見」のつくられ方はめちゃくちゃだったが、それが尾を引いてなおしっちゃかめっちゃかな混乱が続いたのだ。

 経済産業大臣の諮問機関である総合資源エネルギー調査会に横車を押して新設された基本政策分科会が昨年末にまとめた原案では、原発は「エネルギー需給構造の安定性を支える基盤となる重要なベース電源として引き続き活用していく」とし、「原子力規制委員会によって安全性が確認された原子力発電所について再稼働を進める」と書いていた。

 露骨すぎる表現は、さすがに世論対策上好ましくないと考えたのだろう。与党内の脱原発派にも配慮して経済産業省は2月25日、「エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である」と、もっともらしい電力業界用語を使って推進色を薄め、「活用」は削除した。再稼働も原子力規制委員会の「判断を尊重し」とした。さらに「はじめに」で、「原発依存を可能な限り低減する」と強調した。

 とはいえ、もちろん実際には「推進」である。「依存低減」はゼロではなく、どこまで低減するかも示されていない。

 与党内からの反発は、おさまるどころか大きくなるばかり。火に油を注ぐように、自民・公明両党の「実務者会合」は、前述の「はじめに」の記述を後ろに下げ、「深い反省」を述べた一文を削除したり、炎上に慌てて復活したりと、ほとほとあきれるばかりのお粗末さだ。

 まさに批判にすら値しない「計画」だが、原子力委員会が「原子力政策大綱」をつくらなくなったことから、いまや唯一の原子力政策となってしまっているのが情けない。実質的には経済産業省に全権委任されたと言ってよく、これまで以上に原発を推進しやすい体制となった。

 とはいえ、脱原発に向かう流れは変えられず、核燃料サイクルの破綻を取り繕うことも不可能だ。核燃料サイクルについてみれば、「政策の推進」とは言うものの、「高速増殖炉」は言葉としても姿を消し、サイクルを「準国産エネルギー」の根拠にもできなくなっている(それにしても「数年にわたって国内保有燃料だけで生産が維持できる」から「準国産エネルギー」とは、冗談にもならない)。

 再稼働を阻止し、「原発ゼロ」の現実で虚構の「計画」を笑い飛ばすしかない。

 


 

【参考】

エネルギー基本計画のお粗末(『原子力資料情報室通信』2月号)

 経産省の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会が昨年12月に「エネルギー基本計画に対する意見(案)」をまとめ、この1月6日まで意見の公募が行なわれた。「(案)」と書いたが、公募の期間中に、それは削除されている。6日に公募に入り、13日に修正、17日に再修正の上、「(案)」を外した。前代未聞のことである。
 そこでは原子力は「安全性の確保を大前提に引き続き活用していく、エネルギー需給構造の安定性を支える基盤となる重要なベース電源」と位置づけられている。具体的な表現はともあれ、そのような位置づけとなることは、わかりきっていた。「この分科会での意見と結論づけされることに同意できません」という日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の辰巳菊子常任顧問の意見は、当然のように無視された。
 エネルギー基本計画は、原発推進の妨げとなる電気事業の自由化を抑え込むことを目的として2002年に議員立法でつくられたエネルギー政策基本法に基づき、政府が策定するものである。実際には総合資源エネルギー調査会に策定のための会合を置き、そこでつくられてきた。
 03年10月にまず策定され、07年、10年と改定されている。ところが11年3月11日に福島原発事故が起きたため、原発推進の計画ではマズかろうと、新たに基本問題委員会を設置しての再改定作業が同年10月3日からスタートした。原子力資料情報室からは伴英幸共同代表が参加、他にも脱原発派が多く加わったことで、地味だったエネルギー基本計画が、一躍注目を浴びることとなった。
 ところが12年9月14日、同委員会の議論、意見公募、意見聴取会、討論型世論調査を経て当時の民主党政権が「革新的エネルギー・環境戦略」を決定すると、基本問題委員会の三村明夫委員長は、それを不満として以後の委員会招集をサボタージュ。安倍政権に変わるのを待って13年3月15日、基本問題委員会は廃止し、委員長はそのままに、脱原発派を減らした基本政策分科会を設置して計画策定の場を移すという、それこそ前代未聞の醜行が行なわれた。
 福島原発事故など「想定外」だったときの位置づけとそっくりさんに戻るのも、当然である。「安全性の確保を大前提に」とある? それも、一字一句変わらない言葉が、事故前の基本計画にも書かれていた。
 違うのは、分科会からは「エネルギー基本計画案」でなく、「エネルギー基本計画に対する意見」として政府に渡されたことだ。これまでは、そのまま政府の計画として閣議決定されてきたが、今回は政府のほうでより明確に原発推進を打ち出したりしても結構ですよということか。
 この「意見」が原発推進をリードしているところは一つもない。政府の姿勢を単になぞっただけだ。まともに批判する気も起こらない。       (西尾漠)