第49回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会 松久保共同代表 発言メモ
6月5日、第49回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会が開催されました。当室から委員として参加している松久保肇共同代表の発言メモを掲載します。ただし4分に制限されている発言時間を大幅に超過してしまったため、全ては発言できていません。
1.東京電力福島第一原発事故について
前回の委員会でも申し上げたましたが、原子力の行動指針と題する報告書において、申し訳程度に冒頭で福島第一原発事故の反省ややっていることを書いているからそれでいいだろうと言って済む問題ではありません。
政府は廃炉作業を2051年完了と何度も地元に約束してきました。残り25年です。問題は廃炉の姿が見えないことだけではありません。私は東京電力が準備している8兆円の廃炉費用がデブリ取り出しまでであり、その後の費用は含んでいないことが、原子力政策にかかわるきわめて大きな問題だと考えています。
原子力学会は福島第一の廃炉で発生する低レベル放射性廃棄物はおよそ780万トンだと示しています。通常の原発廃炉では発生するのが9000トン程度なので、800倍以上の廃棄物が発生することになります。いまだ通常廃炉で発生する低レベル放射性廃棄物の処分地点も見つけられていない中で、これほど大量の廃棄物をいったいどこに処分するつもりでしょうか。大型原発1基分の廃炉で発生する低レベル放射性廃棄物の処分費は、現在価値換算で250 億円です。単純計算で、廃棄物処分だけで22兆円以上の費用がかかることがわかります。8兆円という現在の見積もりと合わせると、それだけで30兆円はかかる計算です。当然、これ以外にも費用は積みあがるでしょう。あと25年で少なくとも30兆円以上という巨額の費用をねん出する必要があるのです。これは推進政策がもたらした惨事の後始末の問題です。この議論をしないままに、推進の話だけしましょうというのは、私は許されないと考えます。
2.数値目標について
次に原発新設の数値目標についてです。まず、事務局に意見を申し上げたいと思います。今回、この数値目標が私に示されたのは昨晩9時でした。これでは数字の適正性は全く検証できません。意見を求めないのであれば、事務局が自らの責任でやるべきであって、小委員会の名前を使うべきではないと考えます。
そのうえでコメントすると、今回示された数値目標が、電気事業連合会が示した数値目標を使っているのであれば、あの数字は他律的要素による停止期間除外を考慮していないものでした。
仮に再稼働した原発の停止期間をすべて他律的要素であるとして除外し、さらに未稼働原発はかなり楽観的ですが、すべて2028年に再稼働するとした場合であっても、2040年度の設備容量は3,700万kW以上あります。電気事業連合会の示していた2040年度の必要容量3,914万kWを200万kW下回るに過ぎず、今回資料での下限値3,588万kWを上回っています。2050年度の設備容量も3,300万kW以上あり、電気事業連合会の示した2,317万kWという残存設備容量の想定を1,000万kW上回っています。
私は停止期間除外制度の導入に反対しましたが、もしこの制度を前提としないのであれば、いったい何のために他律的要素を運転期間から除外したのかということになります。また、電気事業連合会の資料では、設備利用率は70%を想定していますが、今回の行動指針では様々な稼働率向上の方策が盛り込まれています。もしこれが功を奏するのなら、発電電力量は増えるため、必要な設備容量はもっと減ることになります。
むしろ課題はわずか4年後に迫った2030年の電源構成に占める原発比率20~22%という目標でしょう。現在の2030年需要予測をもとに考えると2,800万kW、およそ30基程度の原発稼働が必要です。現時点で目標達成が困難なことは明らかです。この不足分をどうするのかを目下の課題とする必要があります。
IEAの資料では、原発への世界の投資規模は、再エネの投資規模の10分の1でしかありません。さらに、2025年の発電電力量を見ると、2010年比で原発はわずか3パーセントしか増えていませんが太陽光は8,500%増、再エネ全体でみても156%と圧倒的な増加です。差し迫った脱炭素とエネルギー安全保障を考えるのであれば、巨額のコストを必要とし、時間も20年近くかかる原発新設に時間と労力を費やしている時間はないはずです。
3.不断の安全性向上について
中部電力浜岡原発の不適切事案について、業界全体での品質保証活動の改善や安全を最優先とする基本姿勢の再徹底という方針が示されていますが、これまでも改竄、隠ぺいなど似たような事案があるたびに基本姿勢の再徹底が謳われてきました。今回の事件は、自主的な取り組みではなんら実効性が担保されないことが明らかとなったと言えます。
炉規法側では罰則規定も検討されているようですが、2度と東京電力福島第一原発事故と同じような事故を起こさないというのであれば、むしろ利用政策側こそ厳しい対応が求められるはずです。電事法に罰則規定を設定することを提案します。
また推進サイドから原子力損害賠償の無限責任を有限化するべきという議論が出ていますが、もし不断の安全性向上により二度と事故は起きないというのであれば、事故時の無限責任を負う必要もないはずです。実際、発電コスト検証WGの議論で経産省は過酷事故頻度は12,000炉年に1回としています。事実上、事故はほぼ起きない想定といえるでしょう。一方で、行動指針は「大規模な自然災害と原子力災害との複合災害を想定した防災体制の充実」を掲げていながら、原子力損害賠償のための賠償措置額1,200億円は事故前も事故後も変わっていません。さらに福島第一原発事故の賠償費用の一部が、本来原子力事業者が負担すべきところを、託送料金への上乗せにより需要家に転嫁されています。リスクとコストは国民に押し付けながら、免責の議論が先行していることに大きな危惧を覚えます。
そもそも、長期脱炭素電源オークション、公的融資制度にくわえて、損害賠償有限化まで求めないと、投資判断ができないという現実は、原子力発電所の新設・建て替えが市場原理のもとでは事業として成立しないことを意味している。
4.GX戦略地域制度
原子力をGX戦略地域制度の対象とする方針だと理解したが、すでに原発には電源三法交付金制度において、巨額の立地対策資金が長年補助されてきた。再稼働にあたっても多くの国費が投じられており、2重、3重の国費投入となっている。加えて、長期脱炭素電源オークション・容量市場の対象となっており、さらに現在国会上程中の電事法改正案では原発新設に財政投融資による資金を入れることとしている。国民は多額の負担をしている。・ コスト検証なしに公的支援の是非は判断できない。再生可能エネルギーとの比較を含む独立した費用便益分析なしに、大規模な公的支援の枠組みを決定することは許されない。
5.バックエンド計画
使用済MOX燃料をフランスに搬出して、再処理の技術開発を行うとありますが、これまでは使用済みMOXの議論のたびに、ふげんの経験や英仏での再処理経験があると説明してきたはずです。これまで実証できていなかったのであれば、これまでの説明は一体何だったのでしょうか。また、高速炉開発に関連して、もんじゅの使用済み燃料をフランスで再処理する計画としていますが、フランスには高速炉の使用済み燃料を再処理できる施設は存在せず、建設計画も白紙となっています。これらの点をきちんと整理して説明していただきたいと思います。そのうえで、今回の搬出ではどのような新しい知見が得られるのかといったことをきちんと説明する必要があります。
また、仮に六ケ所再処理が稼働できたとして、MOX利用が現状、極めて限定的であることを考えると、プルトニウムバランスの観点から、再処理量は低迷することが容易に想定できます。また六ケ所再処理工場の1997年という当初の竣工計画が、30年遅延しているという現実がある中で、竣工してすれば計画通りに再処理できると考えること自体が現実的ではないでしょう。MOX燃料工場が六ヶ所再処理工場の竣工の1年後に完成すれば、その後は順調に操業できる前提となっていることも、あまりに楽観的といえるでしょう。
今回の資料では理解活動を頑張ります、といった説明しか出てきていませんが、これまでもずっと同じ話を繰り返してきており、問題は解決できていません。
今回、行動指針では再稼働を2番目に換えられました。これは再稼働が当然の前提であると事務局は考えているのだと理解しました。であれば、再稼働を進めれば当然出てくる使用済み燃料をいったいどうするつもりなのか、という問題が帰ってきます。たとえばプルサーマル計画の遅延は事故前から続いている話です。この解決策を作り、国民や地元住民にきちんと示すことが原子力政策の最重要課題なのではないでしょうか。
6.重要電源指定制度の変更について
重要電源指定について、実態に合わせて炉型の記述に「革新軽水炉、小型軽水炉その他の次世代革新炉の別」を追加するとありますが、革新軽水炉にもBWR、PWRそれぞれあって、革新軽水炉という記述は従来のBWR、PWR、ABWR、APWRの記述にそぐわないと思います。また小型軽水炉にもいろいろなタイプが考えられます。
重要電源指定を申請する際に、すでにメーカー、原子炉等の選定は終わっているはずなので、いっそのこと、炉型ではなく、SRZ-1200、Hi-ABWRといったモデルを記載することにすればいいのではないでしょうか。
また、原発の建設計画の見通しの悪さから、供給計画には記載がなくともよいように変更するとありますが、そもそも開発計画を立てる時点で一定の運転計画は立てているはずです。また10年以上先の話ですから確度が高い情報がかけるわけもなく、従来も供給計画を修正してきた理解しています。今回あえて修正する必要性が理解できません。また、公開ヒアリングについて、事故前は2段階で、1段階目は重要電源指定時、2段階目は設置許可の前の段階に行なっていました。今回1段階目を修正しようとしていますが、全体像が見えないままに1段階目だけ修正という話にはならないと思います。
7.安全評価は原子力規制委員会の業務
東京電力福島第一原発事故の最大の教訓の一つは、規制と推進の分離が徹底されていなかったことでした。この反省に立って原子力規制委員会が設置され、推進官庁である経済産業省から独立した規制機関として機能することが法的に定められています。しかし今回の行動指針には、推進側が規制側に働きかける内容が随所に盛り込まれていると考えます
たとえば、「規制当局との共通理解の醸成」とありますが、産業側が審査の方向性について事前にすり合わせを求めることを意味する。安全審査の内容・結論は規制委員会が独立して判断すべきものであり、推進側が「共通理解」を醸成しようとすること自体が不適切だと考えます。また、ハザード先行審査の認証制度についても投資判断の予見性を口実に、規制審査を推進側のスケジュールに従属させるものです。「許認可の予見性向上に向けた規制当局との対話」についても産業側が審査結果の方向性を事前に把握・誘導しようとするものであり、規制委員会の独立した判断の原則に反すると考えます。
8.平和利用の徹底
保障措置の厳格化と関連して、原子力を長期的に利用していく前提として、原子力基本法で基本方針とされている平和利用に徹することを改めて確認するべきだと考えます。
最後に
世界の発電電力量に占める原子力のシェアは1996年のピーク時の約17%から現在は約9%へと半減しました。これは原子力が技術的・経済的競争力を喪失していることの明らかな証左です。今回の行動指針はこの現実を直視せず、原子力の「復活・拡大」を所与の前提として書かれていますが、現実を直視し、原発に依存しない社会の構築を目指すべきだと考えます。


原子力資料情報室は、原子力に依存しない社会の実現をめざしてつくられた非営利の調査研究機関です。産業界とは独立した立場から、原子力に関する各種資料の収集や調査研究などを行なっています。