即効性かつ有効性をもった『地球温暖化対策基本法』の制定を

緊 急 声 明

即効性かつ有効性をもった『地球温暖化対策基本法』の制定を求めます
「核燃料サイクル」不明記は一歩前進
原子力の推進は温暖化対策を後退させる為、行うべきではない

 地球温暖化対策基本法案が提案され、2020年までに温室効果ガスを1990年比で25%削減、および2050年までに80%削減することを掲げたことは評価できる。また、「核燃料サイクル」の推進が16条に盛り込まれなかったことも一歩前進といえるが、原子力発電の推進が盛り込まれたことに強く抗議する。法案の実効性を疑わざるをえない。

法案の「原発推進」の記載は、密室で議論が行われており、原子力発電がもつ閉鎖性と秘密性と同時に、原子力に国民的合意が得られていない現状を如実に示すものである。

「原子力の推進」は温暖化対策に対し逆効果を生み、対策の進展を妨げることになる。法案から撤回を求める。この根拠として、以下の3点を指摘する。

1. 1990年から日本の二酸化炭素排出を押し上げてきた最大の要因は、電力部門での石炭使用の増加である。原発推進が続く限り、バックアップとして対になる石炭の利用は減らすことは出来ず、原発の推進を続ける限り、二酸化炭素排出削減にメスを入れられない。地震大国日本では安全性のリスクが大きく、近年の設備利用率の低下は地震による影響、そしてその為に出動される火力発電の温暖化効果が大きい。

2. 近年、原子力発電所の建設コストが上昇している。2020年後は費用対効果がされに悪くなる見通しの為、更に再生可能なエネルギーの促進を妨げてしまう大きな「機会コスト」となってしまう。端的に言うと、原発は温暖化対策に効果的でないだけでなく、温暖化対策に逆効果を及ぼす。

3. 稼働中の原子力発電所で温暖化対策を講じようとする場合、老朽化する原発に鞭を打ち、稼動率を上げる方法しかなく、無理なことを行うので効果もなく、安全性を損なわす為、法案に述べられている「安全確保を旨として」の精神に反する。

以上をもって原子力推進は温暖化効果ガス削減には繋がらなく、温暖化対策をむしろ後退させてしまう。法案から「原発推進」を削除するべきである。

2010年3月12日

グリーン・アクション 代表  アイリーン・美緒子・スミス 

原子力資料情報室 共同代表  伴英幸