新刊 『奇跡の海 瀬戸内海・上関の生物多様性』

奇跡の海 瀬戸内海・上関の生物多様性
奇跡の海

日本生態学会上関要望書アフターケア委員会編
南方新社
2,000円(税別)

中国電力が作成した上関原子力発電所の環境影響評価準備書は、「9電力中、最低のもの」と当時の通産省さえ言明した”折紙付き”のお粗末な環境アセスメントだった。しかし建設計画は、その後も一方的に進められている。漁師のだれもが「しょっちゅう見とる」特別天然記念物・絶滅危惧種スナメリは記載されておらず、埋め立て予定田ノ浦の対岸約4キロの祝島は、反対派が多く現地調査が出来ないため「調査範囲外」だ。この「お粗末アセス」に対し、地元のグループ「長島の自然を守る会」が専門家に調査を依頼した。長島の里山と田ノ浦湾の大量の湧水に支えられた里海では、世界的にも希少なナメクジウオなどの海生生物たち、スギモクなどの海藻、天然記念物・絶滅危惧種のカンムリウミスズメ、同カラスバト、同オオミズナギドリ等々、調査のたびに新たな発見が続いている。そしてこの海域が失われたと考えられていた「瀬戸内の原風景」が見事に生き残る「奇跡の海」だったことが、次第に明らかになってきた。本書は手弁当で現地調査に参加された日本生態学会を初めとする各分野の専門家がまとめた、もうひとつの『上関原子力発電所環境アセスメント』だ。陸・海・空の生き物たちがお互いに絡み合いながら生きている生物多様性のホットスポット・田ノ浦の全貌が描かれている。
(S)

第1章 奇跡の海の生物たち
第2章 海をはぐくむ山の豊かさ
第3章 市民科学者の時代へ
第4章 学会の要望書

●執筆者
安渓貴子(山口大学非常勤)
安渓遊地(山口県立大学)
飯田知彦(鳥類・生態系研究者)
今岡 亨(ナマコ分類研究家)
粕谷俊雄(IUCN 種保存鯨類部会委員)
加藤 真(京都大学)
金井塚 務(広島フィールドミュージアム)
小泉武栄(東京学芸大学)
佐藤正典(鹿児島大学)
菅波 完(高木仁三郎市民科学基金)
高島美登里(長島の自然を守る会)
鶴崎展巨(鳥取大学)
野間直彦(滋賀県立大学)
山下博由(貝類多様性研究所)

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