原水禁・原子力資料情報室外務大臣に米印公開質問状

インドに核兵器増強を許す原子力協力と不確かな温暖化防止効果(公開質問状)

 本日、8月28日、原水爆禁止日本国民会議と原子力資料情報室は、外務大臣(外務省軍備管理軍縮課気付)に、下記の公開質問状をファックスで送りました。


2008年8月28日
外務大臣 高村正彦 様
 
原水爆禁止日本国民会議 議長 市川定夫
原子力資料情報室 共同代表 伴英幸

インドに核兵器増強を許す原子力協力と不確かな温暖化防止効果(公開質問状)

 被爆国としての核軍縮外交に関する貴職の日頃のご健闘に敬意を表します。
 核不拡散条約(NPT)に加盟せず核兵器製造を続けるインドへの原子力協力を可能にするために「原子力供給国グループ(NSG)」のガイドラインを変更することを米国が提案していますが、インドにウランを提供すると、ウラン不足に悩むインドは、輸入ウランを発電用に使い、浮いた国内産ウランを軍事用に回すことによって核増強ができるということを印パ両国の専門家らが指摘しています。2007年2月1日に米印の科学者や平和運動の活動家らが当時の安倍晋三内閣総理大臣と麻生太郎外務大臣に提出した書簡でも次のように述べていました。
 「民生用と宣言されて保障措置の対象となる施設の公式リストには、運転中あるいは建設中の国産発電用原子炉のうち8基しか入っていません(インドには、外国から購入したために保障措置の対象となっている原子炉が6基あります。)インドの残りの8基の発電用原子炉、さらには、すべての研究炉、プルトニウムを燃料とする高速増殖炉などは、軍事用プログラムの一部とされ、IAEAの保障措置から外されたままとなります。インドはまた、将来作る原子炉を民生用と分類するか軍事用と分類するかはインドに決める権利があると宣言しています。「核分裂性物質国際パネル」(15ヶ国の核問題専門家からなる独立グループ)用に作成された報告書は、核施設のこのようなかたちの分類と、協定で可能となるウランの輸入とによって、インドは、その気になれば、その兵器級プルトニウムのストックの伸び率を、現在の核兵器約7発分/年から40?50発分/年にまで速めることができると推定(http://www.fissilematerials.org/ipfm/site_down/rr01.pdf )しています」
 この点について、上述の報告書及び書簡の執筆・署名者の一人、M・V・ラマナ博士(バンガロールの環境・開発学際研究センター研究員)が、2008年8月24日、私たちに対し、次のような補足説明を送ってきています。
 「インド核ドクトリンに関する報告書(ドラフト)」(1999年8月17日)は、陸上発射ミサイル、海洋発射ミサイル、航空機という三つの運搬手段(トライアド=3本柱)を含む上限のない野心的な核兵器保有計画を提示している。これらの計画を短期間で達成するには、核兵器用の核分裂性物資の生産を大幅に拡大する必要がある。インドのウラン資源の限界のために、核兵器用の核分裂性物質を増やすことは、原子力発電量を減らさなければならなくなることを意味していた。そもそも、原子力発電は、総発電量の3%以下しか発電していないのである。
 このような逼迫状況の中にあるインドは、ウランの輸入が認められれば、核兵器用の核分裂性物質の生産を増やすことができる。
インドの発電計画は、さらに野心的なものだが、それは主として、現在と同じく石炭火力を基礎とするものである。例えば、インド政府計画委員会は、石炭火力発電を2030年までに3倍に増やすことを計画している。委員会の報告書「統合的エネルギー政策(2006年8月)」http://planningcommission.nic.in/reports/genrep/rep_intengy.pdf の分析は、原子力が10倍に伸びても、それは石炭の消費を2%しか減らさないことを示しているが、需要側の対策を強力に推進すれば、石炭の消費量を14%減らすことができる(報告書の表3-7から算出)。再生可能エネルギー技術を大規模に拡大すれば、同じような石炭消費量の削減をもたらすことができる。
このように、原子力は、非常に楽観的なシナリオにおいても、インドにおける温室効果ガス排出量の削減にわずかしか寄与しない。」

 このような指摘を踏まえて、9月初めに予定されている次回「原子力供給国グループ(NSG)」臨時総会までに次の質問にお答えくださるようお願い申し上げます。

 記

1.日本政府は、インドにウランを供給しても、それはインドの核兵器の増産につながらないと主張しています(例えば、2008年8月15日に外務省軍備管理軍縮課を訪れた市民グループへの説明)がその根拠は何ですか。具体的数値などを挙げてお示しください。
2.原子力関連活動すべてをIAEAの保障措置下に置いたNPT加盟国以外には原子力協力をしないことを決めた1995年NPT再検討・延長会議の決定を破ってまでインドに原子力協力をすることを正当化する理由として、日本政府は、温暖化防止効果を挙げていますが、インドがどのような原子力計画を推進すればどれほどの温室効果ガス削減効果が上がると推定しているのか、他の削減対策と比較しながら、数値を挙げて具体的にお答えください。

以上

連絡先:原水爆禁止日本国民会議
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台3-2-11総評会館1F
TEL:03-5289-8224 FAX:03-5289-8223