原子力資料情報室声明 「未曾有の福島原発事故から2年 脱原発こそが復興・再生への道だ」

 あの事故から2年がたつ。被災者の苦しみは癒えるどころかいっそう深まっていることを思うと、心を痛めずにはいられない。

 いまだに福島では15万4千人が避難生活を余儀なくされている。村が放射線量によって避難区域を分割されると、これによって村民の心も分断されてしまっている。比較的高い汚染地域に住み続けざるを得ない人々の健康への不安や、いわれのない差別的視線を気にしながら暮らし続ける苦しみを、行政当局者も電気事業者も原子力産業界もしっかりと受け止めるべきだ。避難生活はまだまだ続き、汚染状態も長期に及ぶことを考えると、人々の苦しみはいっそう深まっていく。

 国が進める除染(移染)では作業の丸投げによるおざなりな実態も明らかにされて、効果が上がっていない。政府は住民避難への補償を含むきめ細やかな対応を早急に講じるべきである。国会においては被災者支援法の住民に寄り添った具体化策を早期に進めるべきである。損害賠償も同様だ。

 事故が私たちの目前にもたらした事態は小手先の対策ではとうてい解決できない。復旧・復興は厖大な労力と費用が必要だが、それでも完全には元の状態に戻すことができない。事故が人々に残した傷跡もまた元には戻らない。

 しかしながら、電力各社や原子力産業界、それと癒着した官僚たちは、事故を起こした責任を取ることもなく、また反省も見られない。被災者に寄り添う気持が微塵もない。東電は言うに及ばず他社も、電気料金の値上げに際しては原発の再稼働を前提とする始末である。これでは新たな過酷事故を待っているかのようだ。私たちは原発の再稼働を断じて容認できない。

 そもそも原子力開発を進めてきたのは自民党政権である。福島原発事故の責任を負うべき自民党政権が今なお原子力を進めようとしていることはとうてい許されない。

 事故が私たちに問い質していることは大量生産・大量消費に代表される現代文明に対する反省であり、原子力という制御不能なシステムの利用から、省エネルギーや再生可能エネルギーといった制御可能な技術による社会の創造へと向かうことだ。圧倒的な脱原発の世論がこれを求めている。