六ヶ所再処理工場操業延期 高レベルガラス固化体貯蔵建屋改造
六ヶ所再処理工場操業延期 高レベルガラス固化体貯蔵建屋改造
■安全審査の過誤明らかに
六ヶ所再処理工場の計画がまた延期された。主要な要因は「高レベル廃液ガラス固化建屋」および「第1ガラス固化体貯蔵建屋・東棟」での崩壊熱除去性能に係る問題である。すでに報告したように(『通信』369号参照)、高レベルガラス固化体を貯蔵・冷却するためのこれらの建屋が熱解析も実施されずいい加減に設計され、原子力安全委員会や原子力安全・保安院の審査で安全との認可を受け、すでに建設を終了してしまったのである。これらの建屋ではガラス固化体の温度が設計の基準値(500℃以下)より高くなり600℃を越えることも予想され、固化体の変質・劣化を招き貯蔵中の安全性や最終的な処分にも問題を生じる可能性がある。安全審査が、重大な誤謬を犯したのである。青森県はこれを安全上の重要な問題として、改造工事を行わなければアクティブ試験の安全協定の協議に入らないとしている。そのため建屋の冷却空気入口および出口の迷路板等の構造を変更する改造工事が行われることになった。工事は10月18日に開始されたが突貫工事でも数ヶ月を要する。その結果、アクティブ試験開始が予定の2005年12月から2006年2月へ、これに伴い操業開始が2007年5月から同7月へ延期された。この間、ウラン試験で確認された不適合部分の改造工事も行われる。
■『ウラン試験報告書(1)』について
2004年12月から開始されたウラン試験は、劣化ウランを使って各建屋ごとに実施され、第1、第2グループ(主要な建屋)の試験は概ね9月までに終了したとされている。日本原燃は「試験は順調に推移した」と称しており、11月1日『ウラン試験報告書(その1)(各建屋におけるウラン試験)』(以下『報告書』)を原子力安全・保安院に提出した。残りの建屋の試験報告は今後提出される。
1)不十分な情報公開
日本原燃のホームページ上に公表されているのは、『報告書』の【概要版】である。【概要版】では試験の報告の項目として「試験内容」があり、「試験結果と評価」では「確認した」、「目標値以内」といあいまいな結論だけが並べられている。私たちは保安院に提出された『報告書』自体の公開を求めた。後日公開された『報告書(取扱注意)』には、下記の図のように2つの項目の他に「収集されたデータとその分析の要約」の項がある。ところがこの項目の肝心のデータはほとんどすべてがマスキング(白抜き)されており、ウラン試験で確認された機器類の性能は私たちには何もわからない状態だ。プルトニウムに係わる部分以外でも、例えば使用済み燃料の剪断処理時間のようなものまで、企業秘密あるいは核物質防護に係わる情報としてマスキングされている。既知量のウランを含む模擬燃料を処理して、製品の回収量、廃液などに含まれるウラン量などについて結果をわかりやすい形で示す必要がある。マスキングの多くはなぜこの項目が非開示なのかその理由が理解できないものばかりで、『報告書』は何も報告していないに等しい。
2)ウラン試験中の問題
機器類の動作不良など試験中の「不適合」は210件。前処理建屋の硝酸性溶液160リットルの漏えいなどで処置済が79件となっている。原燃は改造工事が必要な6件について設工認申請を行った。2件はウラン試験の最終段階である総合確認試験前までに処置するが、残り4件はアクティブ試験が始まるまでとしている。さらに不適合210件のうち131件が未処理で「本格稼働までに処 置する」という。安全性よりスケジュール優先の姿勢が露骨だ。さらにウラン試験に直接関係がないとされているが、この段階で初歩的な「不適合事項」が多数ある。ウラン試験前までに処置が終了するべき「清掃や調整で復旧可能な機器停止等」、誤警報の発報や放射線計測機器類の故障など、基本的な機器類の不良が多く、大量の放射能、非常に強力な放射線を扱う施設としての健全性が疑われる。
(澤井正子)
『原子力資料情報室通信』378号(2005.12.1)図版略
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