原子力長計策定会議 意見と提案(第4回)

長計策定会議第4回への意見と提案

2004年7月29日
原子力資料情報室
共同代表 伴英幸

1.六ヶ所のウラン試験入りの中止と制度措置委員会の中断は政策議論の大前提

 本長計策定会議では、日本の原子力政策史上、初めて「全量即時再処理路線」を他の政策オプションと比較するという、重大な路線選択の局面にあるという認識をすべての策定委員が持っていると考えます。  末永委員の発言では、今再処理工場の建設を止めることによる経済的損失への不安が再三にわたって表明されています。これは青森にとって大変重要なことだとは思いますが、しかし、それによって政策的選択肢の幅が狭められることは、本末転倒した議論だと言わざるを得ません。むしろ、旧通産省や原子力委員会が10年前に直接処分との比較検討を行っていながら、これを一般市民から隠蔽し続け、さらに、政策の選択肢の議論が提起されていたにもかかわらず、従来の再処理政策を強行してきたことに対する責任を問うべきだと思います。事業の継続性を主張してウラン試験に入ることになれば、後戻りはいっそう困難となり、政策議論を行なう意義は皆無になってしまいます。  制度措置の必要性について、委員会案をよく読めば、六ヶ所再処理工場が新たな支援策なしには稼動できないことを示しています。再処理をめぐってこれまでの全量再処理政策を見直し、他の選択肢との比較検討しようと議論を始めるときに、六ヶ所再処理工場の稼動の前提となるような制度措置を行なうこともまた、政策議論を行なう意義を失わせるものです。  新長期計画が改定されるまで、六ヶ所再処理工場のウラン試験入りの中止と制度措置の中止は、政策論議をする上での大前提だと考えます。

2.核燃料サイクルの選択肢の議論では公正かつ慎重に徹底した審議を

 重大な路線選択の局面にあるがゆえに、これから審議する路線選択の議論では、慎重な審議かつ徹底した検証を行った上で、広く一般からの意見並びに他の専門家の意見をも聞いて、総合的な判断に基づき、本策定会議としての結論を導くことが、公共政策として提言する主体の責任であると考えます。 また、過去さまざまな隠蔽や虚偽報告で国民の信頼を失った業界団体や機関が資料を作成するというのでは、その客観性に疑問が残ります。そこで、

1)本策定会議での徹底した議論を進めながらも、そこでの結論を出す前に、幅広い一般からの意見聴取や意見交換の場を設けて、議論を深めることを求めます。 
2)小委員会への準備作業の中立性を確保するため、策定委員以外の者による検証作業の機会(費用、時間)を確保することを求めます。 
3)小委員会に提出される資料は、すべて情報公開を原則としてください。事業者の営業上の秘密を理由に公開されないケースが多いですが、競争のほとんどない原子力分野で、その理由は納得できません。

3.「小委員会」での検討シナリオと評価の考え方

<1>電気事業分科会の議論を前提としない「路線選択」の議論の必要性

 現在、パブリックコメントにかかっている電気事業分科会の制度措置(別項で撤回を求めている)は、六ヶ所再処理工場の即時稼動を前提としていますが、原子力委員会は、その路線も含めた見直しをするのですから、電気事業分科会で議論された制度措置を前提としない、幅広い「路線選択シナリオ」のもとで進めるべきであろうと考えます。

<2>「路線選択シナリオ」で折り込むべき現実の既定条件と不確実性

路線選択の議論を行う場合、机上の空論ではなく、現実の既定条件を折り込んだシナリオと評価が必要です。具体的には、

・増殖炉は、今後数十年間にわたって(過去の歴史を考えれば、おそらく永遠に)実用化・市場化することはありえないと思われるため、エネルギーセキュリティ上は、期待できないこと
・評価上、日本はすでに38トンのプルトニウムを保有しており、六ヶ所再処理工場がフル稼働した場合にはプルトニウム「ゼロ」バランスを達成できる見通しは、あり得ないと思われること
・仮に六ヶ所再処理工場を稼働したとしても、その処理能力を超える使用済み燃料や仕様外のMOX使用済み燃料は処理できず、これらに対する方策を折り込んだ費用などを算定する必要があること

一方、路線選択の議論を行う場合に、「不確実性」を折り込むことが必要です。特に重要なものとして、具体的には、

 ・六ヶ所再処理工場を仮に運転した場合、トラブルなどによる稼働率低下や事故などの可能性と、それに伴う総費用増大という不確実性
・廃棄物処分(高レベル、使用済み燃料、TRU廃棄物)については、そもそも実施時期、実施方法、実施場所、費用について、大きな不確実性が存在

<3>「路線選択シナリオ」の基本的な選択肢

基本的に、政府が取りうる路線選択としては、前回の吉岡委員の提案に近く、次の3つになると思われます。

路線 六ヶ所再処理工場 検討すべき項目
現状維持 即時運転 ・ 六ヶ所再処理工場での処理量を超える使用済み燃料や仕様外のMOX使用済み燃料について、その対策と費用を折り込むこと
・ 中長期の使用済み燃料貯蔵対策とその費用・ 電気事業分科会は楽観的なシナリオだけを評価しているため、国民負担増大の不確実性を総合的に評価すること
・ 電力会社の破綻や再処理工場における大規模事故など、さまざまな要因による国民負担増大のリスクを評価すること
・ 核燃料サイクルの利点や成立可能性については、代替エネルギー政策との対比により総合的に評価すること
モラトリアム 一定期間の凍結の後に判断 ・ 今後の核燃料サイクル決定の自己責任制の確認(電気事業分科会で提案された国民負担は適用されないが、モラトリアム期間の臨時措置および政策転換の場合の回収不能費用措置は再検討)
・ 短期的には
使用済燃料緊急時対策とその費用の折り込み
六ヶ所再処理工場の財務負担の特別措置
・ 後年での判断が再処理の場合、上欄の事項が適用
・ ワンススルーの場合、
政策転換のための対応措置とその費用
中長期の使用済み燃料貯蔵対策とその費用
ワンススルーへの転換 解体・廃棄 ・ 今後の核燃料サイクル決定の自己責任制の確認(電気事業分科会で提案された国民負担は適用されないが、政策転換に要する回収不能費用措置は再検討)・ 短期的な使用済燃料対策とその費用の折り込み・ 政策転換のための対応措置とその費用の折り込み・ 中長期の使用済み燃料貯蔵対策とその費用・ 脱原発シナリオは、代替エネルギーシナリオの中で提示する

<4>代替エネルギーシナリオとの対比

バックエンドに関する路線選択をする場合、代替エネルギーシナリオとの対比が必要となります。これには、代替性を考慮すれば、以下の2つの異なる性質の対比が必要となります。 ・核燃料サイクルについては、これから実用化する代替技術(自然エネルギーなど)との総合的な対比を行って、政府が支援する意味やその費用対効果を検討する ・原発(軽水炉)については代替エネルギーシナリオの全体像との対比によって、原発に長期的に依存するエネルギー構造と脱原発のエネルギー構造との得失を総合的に評価することができる

4.核燃料サイクル政策の選択肢を議論するために参考となる資料についての要請

 以下の資料は選択肢の総合検討を行なう上で必要なさまざまな資料のうちの一部と考えますので、事務局でご用意願います。

<1>英仏での再処理工場の処理量、稼働率、放出放射能などの実績データ

<2>国内各原子力発電所サイトの、使用済み燃料貯蔵プールの容量と最新の蓄積量、今後の容量拡大工事の予定と蓄積量増大の見通し

<3>六ヶ所再処理工場の貯蔵プールへの使用済み燃料搬出実績と今後の予定(各原子力発電所サイト)

<4>ガラス固化体ならびに使用済み燃料、使用済みMOX燃料の発熱量の時間推移

<5>高燃焼度燃料の導入に関する各社の動向と現状

5.これまでの再処理事業の実施責任の確認(これからの議論の前提として策定会議第1回会合であいまいにされたままとなっている点の確認)

 同会合で「原子炉等規制法第23条は、使用済み燃料の処分に関する記載を義務付けているが、再処理を義務付けていない」とする吉岡委員の発言に対し、藤委員は「民間事業者の原子力発電や原子燃料サイクルの諸事業は、法律上、国の計画である原子力長期計画との整合が求められえいる」「今、私が説明したような仕組みで、義務付けられているということになると、私どもは考えております」と反論し、また、勝俣委員は「原子炉設置許可申請においても再処理を行なうこと、これを実質的な許可要件としているところであります」と述べました。しかし、原子炉等規制法の条文を読む限り、許可申請書の記載事項にせよ許可の基準にせよ、吉岡委員の指摘のほうが正しいと思われます。  電気事業者委員があくまで「義務付けられている」「許可要件」と主張するのであれば、その根拠を明らかにしてください。また、原子力委員会として許可に際し、どのような議論を行ない、主務大臣に答申しているか、具体的な実例を示して明らかにしてください。

6.長計策定会議へ一般から寄せられた意見

コスト試算隠しに関して長計策定会議へ意見書が提出されましたが、同事務局は趣旨が異なるとのことで、各委員に配られなかったようです。当情報室にその旨の連絡と意見書が送られてきましたので、参考に掲載します。

<参考>

2004年7月14 日

原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画の策定委員のみなさまへ

コスト計算隠し事件についての要望書

兼松秀代

 本年7月2日にはじまる核燃コスト比較計算隠し報道と原子力長計策定委員会での議論についての報道を読んで、以下のことを貴委員会に要望いたします。

 1.コスト比較計算隠しの検証報告を行い、説明責任をはたしてください

 第2回委員会の議論でコスト比較計算隠しの検証報告を求めた委員に対し、委員長が「時間の無駄」と発言されたと報道(2004年7月9日朝日新聞)されました。私は、この隠していた事実を直視しない姿勢を、10年間隠していたこと以上に強い失望と不信をもって読みました。 コスト比較計算をしながら、隠していたそのことが問題なのです。なぜなら再処理政策はコスト比較計算を隠したうえに成り立った政策だからです。 なぜ隠されたのか、どういう経過を経て今、「ロッカー」から出てきたのか、国民に説明する責任があります。

2.コスト比較計算隠しの検証が終わり、新長計策定されるまで、再処理工場のウラン試験は中止してください。

3.コスト比較計算隠しの検証は第三者機関が実施してください。  1994年の原子力長計の上に2000年の原子力長計があり、今日の原子力政策があります。  ところが1994年の原子力長計を決定する際の重要なデータの一つ直接処分と再処理による処分のコスト比較計算を1994年2月当時、総合エネルギー調査会原子力部会と原子力委員会長期計画専門部会がそれぞれ行いながら、10年間隠されてきました。  コスト比較計算隠しは原子力政策を検討立案する行政のデータ隠しであり、原子力に対する不信感、憤りは、原子力事業者によるもんじゅナトリウム漏洩火災事故のビデオ隠し、BNFLのMOX燃料データねつ造、東京電力の事故隠し以上に大きないみを持ちます。(原子力事業者だから隠して良いという意味では決してありません。)  政策検討の基盤が隠されてしまったことへの検証は、隠した当事者ではなく第三者機関がなすべきものと考えます。  検証の第三者機関には、「原子力を巡る意見の多様性の確保」(2004年6月15日 原子力委員会決定)を実現してください。  検証もなく、「時間の無駄」、コストは一つの要因「別の場で議論すべきだ」などとする第2回委員会での発言は、10年間隠していたこと以上に不信感を与えます。

以上