耐震指針検討分科会での審議に関する要請書
原子力安全委員会 委員長 鈴木篤之 殿
原子力安全基準・指針専門部会 部会長 矢川元基 殿
要請書
2006年9月7日
原子力資料情報室
去る8月28日、耐震指針検討分科会はその第48回会合において「新指針(案)」を、委員退席の中で決定した。暴挙とも言うべき検討分科会の当日の運営は、大地震にたいして原発は安全なのかを心配している全国民に、底知れぬ深い不信感を抱かせたと言える。
5年にわたる検討分科会の議論は甲論乙駁を経ながら、05年に入ってからこの8月まで平均して月に2回の頻度でひらかれ、検討分科会での各委員の努力には見るべきものがある。また、意見募集に約700件もの多数の意見が寄せられた事実も、この検討分科会の議論が広範に注目されていたことを示している。そしてなお、議論が不十分であったことは明らかである。
この5月、6月に確認された島根原発付近の活断層をめぐっての各委員の議論はきわめて不十分なまま、また、意見募集に対する改正行政手続法に従った慎重な検討を欠いたまま、主査に一任して検討分科会が閉じられたことは歴史的な汚点となるにちがいない。真剣に、かつ積極的に5年間の議論をリードしてきた委員が、このままでは国民の付託に応えることが出来ないとして、第48回会合の席の冒頭で辞任した。その委員の良心に目をつむり、なにを急いで、検討分科会を終わらせる必要があったのか。
今後、「新指針(案)」は原子力安全基準・指針専門部会、原子力安全委員会での決定に持ち込まれようとしている。今からでも遅くない。まだ、間に合う。新指針案を検討分科会に差し戻し、議論が収束し、全委員の合意が得られるまで安全基準部会は待つべきである。そうすれば、辞任した委員を復帰させ、異常な形での分科会閉会とせずにすむ。このままでは、原発にたいする国民の信頼はますます無くなることは明らかである。その責任は一に原子力安全委員会と原子力安全基準・指針専門部会にある。