原子力資料情報室声明:田中知氏は原子力規制委員会委員就任を辞退すべきである
田中知氏は原子力規制委員会委員就任を辞退すべきである
2014年6月11日
NPO法人 原子力資料情報室
田中知氏が原子力規制委員会委員とする案が衆参両院本会議で承認された。
以下に述べるように、あってはならない人選である。
田中氏は長らく原子力推進の論陣を張ってきた人だ。原子力委員会の新大綱策定会議委員や経済産業省の総合資源エネルギー調査会原子力部会部会長などを歴任し、民主党時代の総合資源エネルギー調査会基本問題委員会では原発比率にかんする3つの選択肢で20~25%を主張した。また、原子力学会の会長であり、学会としての福島原発事故調査の部会長を務めた。さらに、一般社団法人日本原子力産業協会の理事を直近まで務めていた。
田中氏には業界からの寄付金の問題もある。田中氏個人への原子力関連企業などからの760万円を超える寄付金に加えて、2008年から2011年までに東京電力から1億円の寄付があったと報じられている。田中氏が担当した核燃料サイクルに係る研究や人材の育成をめざす講座だった。
このような人物が「電力の虜」にならずに規制をきちんとできるとはとうてい考えられない。田中氏が原子力を推進する立場として原子力利用の将来を心配するのなら、原子力規制委員就任の提案を断るべきだったし、今からでも辞退するべきだ。
また原子力規制委員会が、福島原発事故という極めて痛恨の犠牲を払って作られた独立した委員会であるとの自覚を、政府が持つなら、このような人選をするべきでなかった。
政府は今回の人事選定にあたって、民主党政権時代に定めた「原子力規制委員会委員長及び委員の要件について」と題した委員選任ガイドラインを考慮せず、また今後もガイドラインを定める予定は無いとしている。
ガイドラインは、前政権が制定したものはあるが、原子力規制委員会の中立性・公正性・透明性を担保するためのものであり、自民党・公明党を含めた国会の審議を受けて策定されたものである。なぜ、考慮しないのか、中立性・公正性・透明性はどう担保するのか。政府は説明する責任がある。
また、現政権は、規制当局が「規制の虜」となる状況をつくりだした自民党が担当している。自らに福島第一原発事故にかんする大きな責任があることを自覚するべきである。
こうした人選がどこで議論されて出てきたのか知る由もないが、これが原子力規制委員会の骨抜きの第一歩とする意図からだとするなら、福島原発事故の再来を待つようなものと言わざるを得ない。
以上