放射性廃棄物ワーキンググループ「中間とりまとめ」に対する見解
5月23日、総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会 放射性廃棄物ワーキンググループは、高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた取組の見直しについて、中間とりまとめを発表した。
これに対して、委員を務めた原子力資料情報室の伴英幸は、以下の見解を示す。
5月23日に放射性廃棄物ワーキンググループ(以下、廃棄物WG)の「中間とりまとめ」が公表された。委員として議論に係わってきたが、以下の点で「中間とりまとめ」に合意できないので見解を示すことにした。
1ヶ月のパブリックコメントで寄せられた意見は非常に厳しいものだった。事務局のまとめでは、そもそも、これ以上廃棄物を作り出すべきでない、発生の上限を確定するべきとの意見を寄せた人が121人中83人に達している。これに対する事務局の回答は、資源の乏しい日本ではエネルギーセキュリティの確保がより重要、原子力政策に対する考え方やそれに対する社会的合意は世代ごとに変化する、などと木で鼻をくくったような回答だった。原子力に対する社会的合意は開発当初から得られていなかったのが現実で、福島原発事故によって決定的になった。この現実の認識が経産省にはない。
そもそも放射性廃棄物は10万年の安全を確保しなければならない点で、二十年程度のエネルギー確保問題よりも重要な課題だ。将来の環境影響を考えるなら、これ以上作り出さないことが上位に位置する概念と言っても過言ではない。
第一に、処分地選定への取組を進める前にこれ以上作り出さない(発生上限確定含めて)ことを決めるのが先決だと考える。
廃棄物WGでは、日本学術会議が提言した暫定保管の扱いを曖昧にしたまま議論されなかった。この暫定保管の議論をきちんと進めるのが第二に先行すべき議論だ。とりまとめ最後の段落に「パブリックコメントにおいても、国民の皆様から貴重なご意見が寄せられたところであり、政府はこうした意見を重く受け止める」と、上記の内容など寄せられた意見を重く受け止める文言が入ったとはいえ、とても納得できるものではない。
さらに残された課題は多くある。住民の参画で文献調査受け入れの諾否を判断するというが、廃棄物WGでは内容の具体化に向けた議論が行われなかった。可逆性や回収可能性なども議論を掘り下げて制度化しておかないと、単に文献調査受け入れのハードルを下げただけとなってしまう。住民が主体となって決めること、以前の判断を元に戻すこと(可逆性)などは重要な視点で、廃棄物WGがこれに言及したことは評価できるが、これらが絵に描いた餅にならないために枠組みを検討することも廃棄物WGの責任と言える。
こうした重要な諸課題を残したまま、中間報告書を作成することに反対する。また、報道によれば、今後、最終処分関係閣僚会議を開催し、中間報告書を了承の上、閣議で処分地選定活動の強化を決定するとされているが、そのような決定は断じて行うべきでない。
(伴英幸)