1月23日の対話型説明会における経産省とNUMOの発言に対するコメント
2025年1月30日
原子力資料情報室
2025年1月23日(木)に、高レベル放射性廃棄物の地層処分事業者である原子力発電環境整備機構(NUMO)が東京都中央区で対話型全国説明会を開催した。1月28日付の北海道新聞によると、説明会の参加者が「ロシアの分も含めて北方領土に最終処分場を造ることを条件に四島返還してもらってはどうか」という意見を述べた。これに対し、経済産業省幹部は「実現するのであれば魅力的な提案だ」と発言し、NUMO幹部も「一石三鳥四鳥」と話したという。
経産省幹部は北海道新聞の取材に対し、「軽率な表現であったことは陳謝」するとしている。NUMOはHP上で見解を発表し、一石三鳥四鳥という発言は参加者の提案の趣旨を確認しただけであると釈明した上で、「北海道の皆さまの心情に思いを致せば深慮に欠けていたものと反省し、深くお詫び」するという。しかし、これらの発言は表現の軽率さや北海道民の心情という問題だけにとどまらない。
北海道には「北海道における特定放射性廃棄物に関する条例」いわゆる核抜き道条例が存在し、そこでは「特定放射性廃棄物の持込みは慎重に対処すべきであり、受け入れ難い」と宣言している。北方領土が日本固有の領土ならば、北方領土が帰属する地方公共団体は北海道である。もし北方領土に最終処分場を建設するのであれば、核抜き道条例に抵触するのは疑いない。つまり経産省とNUMOの発言は、いざとなれば核抜き道条例を顧みないこともありうると解釈できる。
これは核抜き道条例の尊重を求める北海道知事および北海道民に計り知れない不信感を植え付けるものである。ましてや北海道寿都町と神恵内村の文献調査報告書に関する法定説明会が進行しており、北海道民との透明で公正な対話が強く求められる最中に起こった。原子力資料情報室は、北海道の条例を軽んじ、信頼関係を大きく損なう発言をする経産省とNUMOの認識に対し、深い懸念を表明する。
以上