もんじゅ廃止措置申請

『原子力資料情報室通信』第526号(2018/4/1)より

もんじゅ廃止措置申請

もんじゅの廃止措置計画認可申請が原子力規制委員会に提出されたことは原子力資料情報室通信の前号短信に触れたので、ここではその概要と問題を報告する。報道によれば、規制委員会は3月中にも許可を出し、作業は7月ごろから始まる。

更地にするのに3750億円+α
更地になるまでに30年として、全体を4期に区分して作業をすすめる(表1)。最初に実施するのは燃料体の取り出しである。第2段階以降については、大雑把な区分がされているが、着手年が記載されていない。燃料取出し完了前、すなわち2022年までに策定する。計画が作れないわけではなく、他に理由があるのだろう。2次系のナトリウムについては、規制委員会が早急な着手を強く求めたので、2018年、つまり今年中に2次系の3つのループからナトリウムを取り出すとしている。実は、ナトリウム漏洩事故対策としての改良工事を2007年から2年ほどかけて実施したが、その際には2次系のナトリウムを全量排出して工事を実施していた。既設のナトリウムドレンタンクでは容量不足(40立方メートル)で、機構は再びタンクを設計・製造して原子炉補助建屋内に設置する。なお、水蒸気系設備の機器類は事故により長期停止に至った段階で、分解されて貯蔵されている。
また、固体放射性廃棄物の総量は26,700トン。これには放射性物質として扱う必要のないもの(クリアランスレベル)も含まれているが、ナトリウムは含まれていない。ナトリウムの総量は1次系、2次系合わせて約1,700トンである。
廃止措置の費用は1,500億円と評価している。報道によれば、加えて施設の維持管理費2,250億円が必要。さらに、これらには含まれていない新規制基準対応費用が加わる。建屋等を解体撤去するというが、解体の対象は「放射性物質による汚染のないことが確認された地下建物、地下構造物及び建物基礎を除く」建屋等である。これらを含めれば、費用や廃棄物量がさらに増えることになる。また、これは敷地の跡地利用にも影響してくることになる。
第2期以降の計画が具体化されていない理由は、使用済燃料とナトリウムの扱いが決まっていないからと考えられる。福井県は燃料、ナトリウム、廃棄物など全ての県外搬出を求めている。

表1

燃料体集合体の取り出し
もんじゅには、使用済燃料集合体、新燃料集合体、それぞれのブランケット燃料集合体、試験用燃料集合体などが貯蔵されている(以下、燃料体と略す)。その量と貯蔵場所を表2にまとめた。なお、これ以外に、施設外に新燃料と新ブランケット燃料がそれぞれ42体と66体貯蔵されている。これらの燃料体を燃料池と呼ばれる水冷のプールに貯蔵するのが、第1期の作業となる。およそ5年半の作業としている。作業手順は、①炉外燃料貯蔵槽(液体ナトリウム)から燃料池に移し、②炉心から炉外燃料貯蔵槽に移す。①と②を交互に4度繰り返して、全量を燃料池に貯蔵する。
炉心から燃料体を取り出す時には、模擬燃料体と入れ替える。もんじゅの燃料体は下部は固定されているが上部は固定されていないため、模擬燃料体がないと、取り出しが進んでくるにつれ正しい位置を保てなくなる可能性がある。そうなれば、燃料体を取り出すこともできなくなる。当初は全燃料に対して模擬燃料体を代置するとしてい
て、そのためには模擬燃料体の新規製造が必要になるとしていた。しかし、後にそれは修正され、代置する燃料体の数を減らした。評価上ズレない程度の量にするという。また、燃料池でも燃料を水には直接触れないように缶に入れて貯蔵するとしていたが、これも基本的には放棄された。ただし、燃料ラックの数に限りがあるので、缶詰缶用のラックも使用する。いくつかは缶詰に入れて貯蔵することになる。
液体ナトリウムの中から取り出した燃料体にはナトリウムが付着している。これを除去しないと燃料池に入れられない。除去は水蒸気と水で行う。
取り出し完了まで炉心のナトリウム液位を保つとしている。従って、燃料体を抜き取り模擬燃料体を入れない分はナトリウム量を増やすことになる。こうした状況で例えば地震などにより燃料体の位置がズレることも考えられる。2010年に実施された耐震バックチェックでは地震の揺れによる燃料体の浮き上がり評価がギリギリセーフという状況(許容値40ミリのところ38ミリ)だった。これは炉心に全燃料体が装荷されていることを前提で評価しているが、仮に歯抜け状態になっていた場合には燃料体がズレる、もしくは倒れる恐れもある。そうなれば燃料体の取り出し作業は不能となる。燃料体の位置はコンピューターで管理されているからだ。こうした評価が行われていないことは重大な欠陥だといえる。
また、この事故による臨界安全上の評価も必要になろう。重大事故に発展する恐れもあり、そうなれば公衆への被ばくが避けられない。燃料体の取り出しができなくなれば、例えば、1次系のナトリウム取り出しを優先するなど、廃止措置計画を根本的に見直す必要が出てくると考えられる。

表2

えっ、再処理するの?
機構は、ナトリウムについて、もんじゅの廃止を決定した際の政府の方針として再使用か売却を示していたが、申請書では処理・処分の方法は、新燃料体の取り出し完了までに「政府が結論をだす」としている。一方、使用済燃料について「国内又は我が国が原子力の平和利用に関する協力のための協定を締結している国において再処理を行う」として、具体的な計画及び方法を、第1段階完了までに「政府が結論を出す」。新燃料も国内外の事業者に譲渡する方針だ。政府の結論を得てから申請書に具体的に反映させるという。第2段階以降が曖昧なのはこのためではないかと考える。
しかし、全く同じ仕様の燃料体を使用している炉は国内外になく、新燃料の買い手が現れるとは考えにくい。また、使用済燃料を再処理する施設は国内にはなく、国産技術で開発したものなので、海外でそのまま再処理できるか不明だ。見通しもないのに、再処理を方針とするのは、全量再処理という日本の旧態依然とした方針に沿っての対応が求められたからではないか。再処理は止めて、放射性廃棄物として位置づけし直すべきだ。

(伴英幸)