原子力長計策定会議委員月誌(5)
伴英幸の原子力長計策定会議委員月誌(5)現状維持路線で課題先送り
原子力資料情報室通信より
4つのシナリオは10月22日の策定会議で2つの政策オプションに絞られ、11月1日の同会議で現状追認・問題先送り路線(再処理)の方向が多くの委員の支持で確認されてしまった。策定会議事務局が再処理する路線としない路線の二者択一を迫った形になった。
伴は、再処理しない路線(直接処分路線をベースとする案)を条件付で支持すると表明した。主張内容は、総合評価の結果から再処理しない路線を基本方針とするべきだ、六ヶ所再処理工場の扱いはこの基本路線の上で、改めて議論をするべきだというものだ。条件を付けたのは案の中に原発を基幹電源とする位置づけがなされていたから、また、直接処分といっても、シナリオで検討したような50年貯蔵の後に処分すればよいといったことを支持するものでもないからだ。
この段階で意思表示するべきか、議論が尽くされていないことを訴えるべきか、迷った。議論が尽くされていないことを主張するべきとの意見も傍聴している方々の中には多いのではないかと思った。委員の中にも結論は時期尚早との意見もあった。策定会議に寄せられた意見を議論していないことは事実。そして、それを議論に持ち込むのは、皆に意見を求めた伴の責任でもあるだろう。
しかし、策定会議でそれが通ったか? 議長が会議の進め方の議論をしたいと提起しても、再処理路線に賛成だといった結論を先に述べる委員が多い、果ては、他の委員から、何度も同じ主張を繰り返している委員が多いと指摘される、策定会議はそんな場である。手続きの不備や議論の不十分さを訴えても、圧倒的多数で再処理路線が選択され、再処理に反対の意見はなかったと総括されてしまうだろう。このような状況は避けたかった。
確認された方向性とは、「(六ヶ所再処理工場の)再処理能力の範囲で使用済み燃料の再処理を行うこととし、これを超えて発生する使用済み燃料は中間貯蔵することとする。中間貯蔵された使用済み燃料の処理の方策は、この基本方針を踏まえて2010年ごろから検討を開始する。この検討は再処理の政策的意義を踏まえつつ柔軟性にも配慮して進める…」である。
提案された文は、単に「処理」となっていて「再処理」となっていない。果たして、再処理しないことを含むのか…。近藤委員長は、基本方針に沿うのだから再処理もしくは中間貯蔵の継続の検討であって、再処理しないことは含まれないと、やや苦しい返答だった。とはいえ、「再処理」から「再」が取れていることの意味を重く見ることができるだろう。
今回の策定会議では、六ヶ所再処理工場の稼動を認める現状維持路線を、残念ながら転換することは出来なかった(工場の稼動はまだ止められる可能性は高いが)。現状追認に「国民合意」が得られるとは、とうてい考えられない。多くの市民がこの結論に納得しないだろう。(11月9日)