声明「南鳥島での高レベル放射性廃棄物地層処分には多くの問題がある」

南鳥島での高レベル放射性廃棄物地層処分には多くの問題がある

2026年4月13日

NPO法人 原子力資料情報室

東京都小笠原村の渋谷正昭村長は4月13日、住民説明会で国による南鳥島での文献調査の申し入れについて「国の責任で決めるべきだ」と述べ、容認する考えを示した。これは経済産業省が3月3日に高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定に向けて、第一段階の調査である文献調査を南鳥島で実施するために、東京都小笠原村に申し入れを行ったことに対する回答だ。だが南鳥島が最終処分場の適地か否かには現時点でも多くの疑問がある。

 当室は3月10日付声明で、南鳥島がプレート境界から十分離れた太平洋プレート上にあるという地質学的安定性を有しているものの、島の狭さや海底構造の急峻さからくる最終処分場の地上施設や地下施設建設の困難さ、長距離輸送や海面上昇による浸水の恐れなど安全上のリスクがあり、それらはすべて処分コストの上昇をもたらす可能性があると指摘した。[i]加えて、地下施設閉鎖後の環境モニタリングや、万が一の漏洩時の対処も困難が容易に想定できる。

 また近年では南鳥島でさえ、火山活動の影響を避けられない可能性を指摘する研究結果も出てきている。南鳥島近海では海洋プレートの屈曲が原因で生じる、「プチスポット火山活動」が発生していたことが知られている。[ii]300万年前以降に活動したことが確認されているこれらの火山の活動領域は、南鳥島から最短で約46 kmであるという。[iii]この研究成果は調査研究がまだ始まったばかりであり、今後より近距離での活動の可能性も否定できない。

 国と処分事業者の原子力発電環境整備機構(NUMO)は3月14日と21日に父島と母島で計4回、説明会を開催したが、国とNUMOの説明資料にはそれらの問題点は言及されていない。国やNUMOの立場は、わからないから文献調査を行いたいということなのかもしれない。だが、NUMOの資料を見ると、処分場の地上施設や地下施設レイアウトで南鳥島の小ささを意識していることが分かる。

 さらに説明会でも十分共有されていない事実がある。当室の声明でも指摘しているが、南鳥島での処分には、現行の300m以深での地層処分ではないディープ・ボアホール(超深度掘削坑処分)と呼ばれる数km∼10kmの地下に埋設する処分方法も提案されているのだ。南鳥島は狭く、海底構造が急峻であり、さらに遮水性の低い石灰岩が数百m以上に渡り堆積しているので、安全かつ確実に埋設することが難しいからだ。ただ、もしディープ・ボアホールで処分する場合、従来とは方法が異なるため、処分場の設計や安全性の概念をこれから築き上げていかなければならない。南鳥島での調査を申し入れるのであれば、将来的にこのようなことを検討する可能性があるということも説明するのが、住民に対する誠実な態度ではないか。

 南鳥島の文献はほとんどなく、文献調査で分かることも多くない。結果、実際にボーリング調査などを行う概要調査、場合によっては精密調査まで進まなければ、最終的な適不適は判断できないことも十分に考えうる。選択肢としてきわめて難しい南鳥島がいつまでも選択肢として残り続けることで、時間とコストを浪費することにもなりかねない。

 説明会で出た住民の質問を記した資料を見ると、まだまだ住民の合意形成にはほど遠いことが読み取れる。過去、処分場候補地として名前の挙がった自治体では、受け入れ是非をめぐって住民間の深刻な分断が引き起こされてきた。今からでも遅くはないので、受け入れは多様な住民・専門家の意見を踏まえ、慎重に判断することを求めたい。

以上

参考 南鳥島近海の水深


[i] cnic.jp/73033

[ii] www.tohoku.ac.jp/japanese/2019/11/press20191111-03-kazan.html

[iii] www.waseda.jp/inst/research/news/81957

原子力資料情報室通信とNuke Info Tokyo 原子力資料情報室は、原子力に依存しない社会の実現をめざしてつくられた非営利の調査研究機関です。産業界とは独立した立場から、原子力に関する各種資料の収集や調査研究などを行なっています。
毎年の総会で議決に加わっていただく正会員の方々や、活動の支援をしてくださる賛助会員の方々の会費などに支えられて私たちは活動しています。
どちらの方にも、原子力資料情報室通信(月刊)とパンフレットを発行のつどお届けしています。