原発ゴミは「負の遺産」―最終処分場のゆくえ3

基本情報

編著 西尾漠・末田一秀 編著
発行 創史社
発行日 2009年2月
定価 1200円+税
会員価格
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概要

まえがき

 「最終処分場のゆくえ」を副題とするこのシリーズも三冊目となりました。最初の『原発のゴミはどこにいくのか』の刊行は二〇〇一年五月。原子力発電環境整備機構(NUMO)が処分場候補地の公募を開始する一年半前のことでした。推進側からみて候補地への最短距離に位置する青森県、北海道、岐阜県の運動と、同様の距離にあってなおNUMOの先回りをして全国的な拒否の体制をつくろうと訴えた岡山県の運動が、その中身です。
 二冊目の『原発ゴミの危険なツケ』は、公募開始から半年経った二〇〇三年六月刊。岡山県では、人形峠のある上斎原村を除く全市町村で拒否回答を得たことが報告されています。本書中にあるように、上斎原村は鏡野町などと合併、新たに発足した鏡野町からは〇五年八月、拒否の回答がなされました。
 公募開始から六年の本書は、六年間にわたって候補地(概要調査地区)の候補(文献調査地区)すら決めさせることのなかった運動の成果の上に、改めて全国的な拒否体制をどうつくるかを示そうと企画されました。共編者である末田一秀さんや二冊目以来の執筆協力者のさとうみえさんの論考は、よりいっそう明確に処分場計画の危険性と不明朗さを暴き出してくれています。一二三ページで末田さんの言う「処分場を進んで受け入れるところが簡単に出てくるとは思え」ない状況が、いよいよもってはっきりしてきたと言えるでしょう。
 しかし、他方で青森県、北海道、岐阜県では、残念なことにさらに一歩、処分場への距離を縮める動きとなっています。また、今回新たに長崎県から報告が寄せられたことは、上述の運動にもかかわらず、「もぐら叩き」的に応募の出鼻をくじいていくだけでは、やがて叩ききれない事態ともなりうると教えています。
 結果として撤回されたとはいえ、「最終処分場を誘致しようとした自治体」は少なくありません。水面下ですすめられているところもありそうです。これからは国のほうから堂々と働きかけてくるかもしれません。地層処分という乱暴きわまりない「ごみ捨て」を許さず、きちんと管理をつづけていくべきではないか、ということも含め、いまこそ大きな議論を起こす必要があります。
 一冊目から一貫して主張しているように、この問題の解決方法は「原発や再処理工場を止める」以外にありません。それでも既に発生した放射性廃棄物は消すことができないのであれば、どうしたらよいのでしょうか。一冊目、二冊目の結びとした同じ文章を、以下にもう一度、転用することをお許しいただければ幸甚です。
 「安直な世代責任論や電力消費者責任論に与するつもりはない。だが、私たちが無責任でいれば、高レベル放射性廃棄物に限らずあらゆる放射性廃棄物が生み出されつづける。どこかに最終処分場が押しつけられ、将来の世代に対する時限爆弾をしかけるような乱暴な処分が行われてしまう。そんな出鱈目を許さないことこそが、現世代の、電力消費者たる私たちのほんとうの責任だろう」。

(西尾 漠)

追加情報

発行 八月書館

もくじ

まえがき

封じ込めできない放射能―高レベル放射性廃棄物の危険性……末田一秀

最終処分場を誘致しようとした自治体―重要な知事見解と都道府県への働きかけ……末田一秀

長崎県の高レベル誘致計画と現状―財政ひっ迫の自治体を狙い打ちか……坂本浩

研究所が最終処分場への懸念広がる―北海道幌延で進む高レベル広報活動……久世薫嗣

「確約書」で最終処分場にならないのか―青森現地の現状と不安の実態……山田清彦

岐阜県東濃と最終処分場の選定―事実をあばいた住民たち……兼松秀代

県内全市町村の首長から拒否回答―岡山県で進められた高レベル反対運動……放射能のゴミはいらない!県条例を求める会

高レベル放射性廃棄物にかかる費用―不明朗な管理・保管料金の実態……さとうみえ

研究施設等廃棄物の実態と危険性―「高い」低レベル放射性廃棄物……西尾漠

【図説】高レベル・TRU廃棄物の発生箇所と再処理工場の事故とその可能性

高レベル最終処分場をどう止める
―国の進め方(末田一秀)
―市民のためのチェックリスト