原子力・核・放射線事故の世界史

基本情報

編著 西尾漠
発行 七つ森書館
発行日 2015/2/1
定価 4000円+税
会員価格
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概要

長崎、広島への原爆投下に先立つ1945年6月6日、ロスアラモス国立研究所で起きた初の臨界事故から、スリーマイル島原発事故、チェルノブイリ原発事 故、福島第一原発事故など、2014年までの70年間に起きた435件の事故を解説する。原子力・核・放射線事故年表の決定版。

追加情報

まえがき

 これまで世界各地で、実にさまざまな核・原子力・放射線事故が起きている。その総ざらいをしてみた。と言っても理工書ではない。技術的な視点より社会的な視点に重きを置いている。

 「実にさまざま」というところに注目していただきたい。あらゆる体制の国で、あらゆる種類の施設で、あらゆるタイプの事故がすさまじい数で起きている。老朽化した施設でも、動き出したばかりの施設でも、事故は起こる。それが、原子力・核・放射線事故だ。

 そしてだからこそ、各国は自国の事故を隠すだけでなく、他国の、政治的に対立する国の事故まで隠したり、小さく見せかけることに「協力」してきた。ウラルの核惨事然り、スリーマイル島原発事故然り、チェルノブイリ原発事故然り、福島原発事故然り……。

 深刻な事故ばかりでなく、ちょっとおかしな事故も拾っている。息抜きにしてもらえればありがたいが、そんなおかしな事故が起こってしまうことが深刻だとする考え方もあるだろう。

 放射線事故はかなり「人間的」で興味深く、国際原子力機関(IAEA)がそれぞれの事故について詳しい報告書を出していることもあいまって、ついつい細 かなことまで書きたくなる。言いかえると、「人間的」な放射線事故は、おおもとの管理をする人がしっかりしていて、人々に必要な知識・情報がきちんと提供 されていれば防げるはずのものである。それが、最近になってもなお続いていることが悲しい。

 いや、核・原子力事故も変わらないと反論があるかもしれない。確かに、防げたはずの事故も数多い。また、人間の失敗で起きた事故もあれば、人間の働きで 事故の発生や拡大を食い止めた例も無数にある。そして、放射線事故とはまた違った形で、人間のドラマがあった。いくつかの大きな事故については、そうした ドラマを描いたドキュメントが何冊も刊行されている。

 その上でやはり核・原子力施設については、同様の、あるいはまったく別の形の事故が、これからも起こるのを避け続けることはできないだろう。より破滅的な事故が、いつ起きてもおかしくない。

 本書は、さらに詳しく調べるための事故リストないし事故年表だと考えていただければ、ありがたい。事故リストや事故年表も、インターネット上にたくさん あって、フルに活用させていただいた。ただ、日本語のものは少なく、内容も充実していない。本書で補充できることを願っている。

● 放射線事故については、いくらでも時代をさかのぼれそうだが、1945年を起点とすることにした。

● 見出しに国名をつけた。ただし、航空機や艦船については、事故の起きた場所でなく、所属国名としている。

●「レベル」が付されているのは、事故の国際評価尺度である。レベル0から7まであり、0は尺度以下。さらに圧倒的多数の「評価対象外」がある。基本的に結果論での尺度であって、真に重大さを評価したものとは言い難い。

● 被曝線量については、それぞれの出典のまま、シーベルトとグレイを併存させている。レム、ラドはシーベルト、グレイに換算した。レントゲンはあえて換算しないこととした。

● 被曝線量の推定値やひび割れの大きさなど、文献によって数値に違いがある場合、適当と思われる数値を採用し、他の数値もあることまでは記さなかった。

● 機関名や役職名などは、いずれも当時のものである。一例として、動力炉・核燃料開発事業団は核燃料サイクル開発機構と名を変えた後、現在は日本原子力研究所と統合され、日本原子力研究開発機構となっている。

  2015年1月  (被爆70年、東京電力福島第一原発事故4年に)西尾 漠

もくじ

1 臨界事故相次ぐ[1950年代前期まで]
2 隠される大事故[1950年代後期]
3 冷戦下の核事故[1960年代前期]
4 水爆落下[1960年代後期]
5 日本事故列島[1970年代前期]
6 TMI事故への道[1970年代後期]
7 ひろがる放射線源被曝[1980年代前期]
8 地球被曝[1980年代後期]
9 アジアで事故続発[1990年代前期]
10 核燃料サイクルの悪夢[1990年代後期]
11 老朽化する原発[2000年代前期]
12 自然災害が原発を襲う[2000年代後期]
13 メルトダウン[2010年代前期]

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