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テクネチウム-99(99Tc)

半減期 21.11万年

崩壊方式
ベータ線を放出して、ルテニウム-99(99Ru)となる。

存在と生成
テクネチウムは初めて人工的につくられた元素で、すべての同位体が放射性である。天然では、ウラン238(238U)の自発核分裂によってウラン鉱などの中で生じるが、生成量は少ない。
人工的には、核分裂またはモリブデン‐99(99Mo、同位体存在比24.13%)の中性子捕獲で生成するモリブデン-99(99Mo、65.94時間)が崩壊して生じるテクネチウム-99m(99mTc、6.015時間)の崩壊で生成する。テクネチウム-99は、核分裂で生成するテクネチウムの同位体の中でもっとも半減期が長い。
核分裂による生成がより重要である。1メガトン(TNT換算)の核兵器の爆発で8,000億ベクレル(8.0×1011Bq)が生成される。電気出力100万kWの軽水炉を1年間運転すると、20兆ベクレル(2.0×1013Bq)が蓄積する。使用済核燃料1tには0.84kg(5,200億ベクレル、5.2×1011Bq)が含まれる。

化学的、生物学的性質
テクネチウムはレニウムと似た性質をもつ。水溶液中で4価と7価の原子価を取ることが多く、7価の場合は過テクネチウム酸イオン(TcO4)として水によく溶ける。

生体に対する影響
放出されるベータ線は水中で0.8mmまでしか届かない。内部被曝が問題となる。10,000ベクレルを吸入した時の実効線量は0.032ミリシーベルト、経口摂取した時は0.0078ミリシーベルトになる。
体内に摂取されると、大部分はすみやかに排泄されるが、ごく一部は2ヶ月ほど残留する。

テクネチウム-99m ― 診断に用いる放射能
短寿命のテクネチウム-99mは、放出ガンマ線のエネルギーが140万電子ボルトで、ガンマ線測定器の検出効率が高くなることもあって、核医学的診断によく用いられる放射能である。

再処理工場からの放出
六ヶ所村での予定年間処理量は800tで、その中には670kg(370兆ベクレル、3.7×1014Bq)が含まれている。再処理の工程で、テクネチウムが揮発性の化合物をつくりにくく、排気中には含まれず、排水中に少量が放出される。
再処理の結果として発生するガラス固化体にはほとんどすべてが入ってくる。1,000年以上経過後に残っている主な放射能の一つで、周辺の環境を汚染する恐れがある。

放射能の測定
水試料では、テクネチウムを分離し、ベータ線を測定するのがふつうの方法である。環境試料では、化学処理によって分解して溶液にしてから、同様の操作をおこなう。放射線測定には液体シンチレーション計数装置またはバックグラウンドの低いガイガー計数管を用いる。

 

放射線エネルギー(100万電子ボルト) ベータ線, 0.294(100%)
比放射能(ベクレル/g) 5.6×108
排気中又は空気中濃度限度(酸化物、水酸化物、ハロゲン化物及び硝酸塩、ベクレル/cm3) 3×10-5
排液中又は排水中濃度限度(酸化物、水酸化物、ハロゲン化物及び硝酸塩、ベクレル/cm3) 1
吸入摂取した場合の実効線量係数(酸化物、水酸化物、ハロゲン化物及び硝酸塩、ミリシーベルト/ベクレル) 3.2×10-6
経口摂取した場合の実効線量係数(酸化物、水酸化物、ハロゲン化物及び硝酸塩、ミリシーベルト/ベクレル) 7.8×10-7