[六ヶ所]プール漏洩問題に関する青森県への要請書
青森県知事
三村申吾 殿
要請書
2005年7月22日
原子力資料情報室
六ヶ所再処理工場の稼働問題は、青森県にとっても、また日本の原子力政策においても最重要課題となっており、原子力長期計画策定会議をはじめ多くの場で議論されているところです。そのような中で6月8日六ヶ所再処理工場使用済燃料貯蔵プール・バーナブルポイズン取扱ピットで漏えい事故が再発し、工場そのものの安全性、さらに2002年以降に行われた「総点検」への信頼が大きく揺るぐ結果となっております。
この漏えいは、1)燃料プール建設時の「切り欠き・肉盛溶接」という不正工事だったこと、2)「総点検」作業におい当該部分を見落としたこと、3)バーナブルポイズン取扱ピットでの機械調整工事により貫通穴を生じさせたこと、という3つの要因が日本原燃から報告されています。
ところが日本原燃には「総点検」とそれに続く品質保証体制が、今回の事故で「機能しはじめた」、「長期的な運転のなかでは、漏えいを想定することも必要と考えるが、燃料貯蔵プール等の信頼性は向上した」等々、漏えい事故再発への真摯な反省の態度は全く見られておりません。今回の日本原燃の対応は、原子力事業者が当然行うべき最低限の事故トラブルへの対応がやっと出来た、に過ぎないのです。
前回「総点検」における点検方法等に根本的欠陥があり、明らかに不正工事が見落とされたのです。日本原燃は見落とし部分(約100箇所)の再点検を実施するとしておりますが、これでは不十分です。問題は、施設の安全性だけでなく、日本原燃が社会的信頼を失っていることです。漏えい事故再発の複数の要因と、六ヶ所再処理工場の品質保証体制の更なる強化を視野に入れ、当然、再処理工場全体を対象とする「総点検」のやり直しを青森県は日本原燃に強く要請するべきです。それがなければ、崩壊している「総点検」への信頼性を回復することは難しいでしょう。
ところが日本原燃は事業者としての当然行うべき安全確認を放棄するような漏えい問題に対する対応を公表しております。現行の品質保証体制の問題が明らかになったにもかかわらず、保安規定を改定し、今後は毎時10リットル以下の漏えいについては、発見しても漏えい箇所の特定作業、補修作業を行わない方針を決定しています。ただ通常1回/日の巡視点検を3回/日に増やし、経過を観察するとしているのです。
毎時10リットルという量は、決して少ない量ではなく、毎日ドラム缶1本以上の漏えいを目安にするということは、安全確保の考え方としても、県民感情としても決して認められるものではありません。日本原燃はその根拠として「再処理安全審査指針」や「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計指針」をあげております。しかし今日の日本で「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計指針」を適用し建設された原発で、燃料プールを漏えいさせたまま運転している施設はどこにもありません。なぜ六ヶ所再処理工場のプールだけにこのような安全性無視の保安規定を導入しようとするのでしょうか。私たちは、日本原燃が燃料プールの漏えい問題をきちんと検知する能力、対応を判断する能力が欠落し、このような重大な問題に対応できない会社であると断じざるをえません。
六ヶ所再処理工場はその経済的な負担を含め、国民の全体の問題です。国民は、漏えいしていることがわかっているプールをそのまま放置し運転を強行するような事業者と、それを認める国の姿勢に批判的な目を向けることになるでしょう。再処理工場の安全性が自らの命と安全に直接かかわる青森県民にとって、今回のような「安全基準の切り下げ」ともいうべき保安規定の改定は、再処理工場本体の安全性にも大きな影響を及ぼすものと考えられます。問題は、事故トラブルには即刻対応し補修を行うという六ヶ所工場の安全確保体制と、そのような体制を日本原燃が守ることです。このような無謀な保安規定の改定を認めることなく、三村知事、県職員が一丸となって県民の安全と安心を守るために尽力されることを強く要請いたします。