原子力政策大綱(案)へのご意見をお寄せください(2005/7/29~8/28)

原子力政策大綱(案)へのご意見をお寄せください

 新原子力長計策定会議は、これまでの原子力長計に変わって「原子力政策大綱」という名称で案をまとめました。7月29日から8月28日まで、広く皆さまからの意見を募集しています。

 「原子力政策大綱」という厳しい名称になったのは、省庁再編で原子力委員会が内閣府に移ったことによる。かつては原子力委員会の長は科学技術庁長官で、決定された計画は大臣決定となって閣議報告された。しかし、現在は内閣府の一諮問機関であり、決定はそれだけでは効力を持たない。その辺の事情を「計画」から「大綱」へと言葉の変化の中に読み取るのらしい。

 今回の「大綱」では、1)原発の発電電力量にしめる割合を3~4割に固定することで原発の建替えを促した。電力自由化の中で原発が現状維持できるように国は諸制度を整備する。制度整備は、原発の安全余裕を削る恐れや、国民負担を強いる恐れがある。2)核燃料サイクル議論で取りえる選択肢を抽出して総合評価する手法は良かったものの、評価内容は恣意的で、結果は現行の再処理政策の踏襲に終わった。再処理を止めると使用済み燃料の行き場がなくなり原発も止まってしまうとの認識が示された点は注目に値する。青森県が使用済み燃料の受け入れを拒否するからだというが、原子力と地域との共生が「泥沼」に陥っているのではないか。策定会議では、再処理を止めれば高速増殖炉開発も止まってしまうとの発言も聞かれたが、高速増殖炉派にとっても再処理の廃止には危機感を持ったのだろう。3)その高速増殖炉については「経済性などの諸条件が整うことを前提として」と条件が付いているものの2050年頃から商業ベースでの導入を目指すとした。根拠はないに等しい。

 95年のもんじゅ事故、97年の東海再処理工場の火災爆発事故、99年のJCO臨界事故といった中で21世紀最初の長期計画が2000年に改定されたが、同長計が将来の見通しについて曖昧な表現だったとすれば、今回は数値目標を出しながら、原子力推進の姿勢を一段と明確にした。とはいえ、原子力産業界から同産業の低迷や人材不足などの危機感が出されていることから、原子力の将来が極めて不透明であることは紛れもない事実である。それはともかく、一委員として、推進基調を一段と鮮明にした「原子力政策大綱(案)」をとても受け入れられない。

 脱原発派を含めて議論が進められた今回の「大綱」だったが、脱原発の視点はほとんど入れられなかったばかりか、原発推進の姿勢が強く出される結果となってしまった。「少しは期待したが、30年前からほとんど変わらない政策が踏襲されて大いに失望した」という意見をよく耳にする。筆者も共感するところだが、あきらめずに意見を出していくことが重要だと考えている。状況が変われば政策も変わってくるのだから、その状況を変えるように努力しつつ、脱原発へ向けた意見をしっかりと表明していくことが大切ではないだろうか。

 どうか、案をお読みいただき、皆さんのご意見をどしどしお寄せくださいますよう、よろしくお願いします。

 原子力政策大綱(案)は原子力委員会のホームページから入手できますし、同委員会へ送付を依頼することによっても入手できます。

aec.jst.go.jp/jicst/NC/tyoki/bosyu/050729/bosyu050729.htm

参考
今までの伴の意見書はこちら
cnic.jp/modules/news/index.php?storytopic=7