原子力長計策定会議意見書(第31回)

長計策定会議意見書(31)

2005年7月28日
原子力資料情報室 伴英幸

1.新計画(案)については、賛成することができません。この案の骨格をなす3点について特に同意できないからです。①「2030年以後も総発電電力量の30~40%程度という現在の水準程度か、それ以上の供給割合を原子力発電が担うことを目指すことが適切である」として、原発の建替えを事実上義務付ける内容となっていること、②核燃料サイクルの総合評価結果に同意できないこと、③高速増殖炉サイクル技術の研究開発で条件つきでありますが「2050年頃から商業ベースでの導入を目指す」とされたことです。
 よってパブリックコメントを求めるに際し、構成案への意見公募の際と同様に、賛成しない者のいることの明示を求めます。
 なお、①に関しては、すでに次のようなアンケート調査があります。7月13日付の日刊工業新聞に掲載された原発に関する意識調査結果の中で、「2030年時点でも(原文ママ)原発が全発電の30~40%かそれ以上を担う」という新計画(案)の方針についての質問への回答は、原発非立地の都府県で支持する39.5%、支持しない35.1%に対し、原発立地道県では支持する38.4%、支持しない39.3%と不支持が多くなっています。原発は縮小すべきとする人は、非立地都府県の28.6%に対し、立地道県では32.2%でした。その理由として「国や電力会社の安全への取り組みが信用できないから」と答えた人は、非立地都府県では15.3%ですが、立地道県では23.8%にのぼりました。

2.新計画(案)には賛成できませんが、その上でこれまで述べてこなかった点でいくつか疑問点を指摘します。

2-1. 1-2.現状認識の項で、「放射線利用の利害得失、放射線の持つ特性、放射線の人体への影響等について、国民に十分に説明し、理解を促進する取組が重要である」と記述していますが、放射線の人体への影響は説明のみならず研究の重要な分野で、「研究開発を一層進める」(現行長期計画)必要があるのではないでしょうか。大綱では言及されていませんが、きちんと言及するべきことだと考えます。

2-2. 1-2-5の項で「放射性廃棄物は人間の生活環境への影響を有意なものとすることなく処分できる」と変更されましたが、いまだ実証されていないことに対して、「できる」と断定することは妥当でないと考えます。

2-3. 1-2-6の項で、新計画(案)には書き込まれていた「なお、使用済み燃料を廃棄物として処分することにしている国もある」との記述が削除されていますが、この現状認識は残すべきです。また、削除することは、核燃料サイクルの定義を狭めるものでもあります。

2-4. 同項で「再処理で回収されたプルトニウム、ウランについては、…MOX燃料に加工し、軽水炉で利用すること、すなわちプルサーマルが電気事業者により計画されている」と記述されていますが、電気事業者が回収ウランをMOX燃料に加工するとは聞いたことがありませんし、添付図にもそのようになっていません。事実誤認ではありませんか?

2-5. 「2-2.平和利用の担保」ではプルトニウム利用計画の公表について述べていますが、現長期計画で強調されている「利用目的のない余剰プルトニウムは持たないという原則」について一言も触れていません。この大原則について、原子力委員会の2003年8月決定だけで済まさず、きちんと明記するべきです。

2-6. 「3-1-3.核燃料サイクル(4)軽水炉によるMOX燃料利用(プルサーマル)」では「プルサーマルを進めるために必要な燃料は、当面、海外において回収されたプルトニウムを原料とし」云々とされています。これは、海外回収プルトニウムを優先的に利用すると解してよいのでしょうか。海外分の全量利用の具体的な目途がたってから六ヶ所再処理工場分の加工に入ると解してよいのでしょうか?

2-7. 放射線利用についての論点整理では「放射線利用技術が他の技術と比較して優位性がある場合や、放射線利用技術の固有の特徴が必要不可欠な場合に採用されるべきものである」とありましたが、新計画(案)の「3-2-1.基本的考え方」では省かれています。大事なことだと評価された記述を外さないほうがよいと考えます。

2-8. 国民の理解を大変重視した扱いになっています。しかし、ここでは政策が明確に決まったものに対しての国民の理解を重視する書きぶりになっています。
例えば、「3-3.放射性廃棄物の処理・処分」の項で、基本的考え方に「国民との相互理解に基づく実施の原則」が掲げられ、(1)高レベル放射性廃棄物では、地方公共団体が応募する際には「最終処分事業についての住民の十分な理解と認識を得ることが重要である」との認識が示され、3-3-4.原子炉施設の廃止措置等では「地域社会の理解と協力を得つつ勧めることが重要である」との認識が示されています。ことろが、3-3-2.地層処分を行う放射性廃棄物(2)の地層処分を行うTRU廃棄物の併置処分、英国から提案の等価交換、フランス提案の新固化方式などについては、「理解」の文言が入っていません。基本的考え方の項では、「処分のための具体的な対応について検討中の放射性廃棄物の処理・処分について」事業者が「国民および地域の理解の下」に立案、推進となっていますが、国の検討に際しても国民理解のもとに進める必要があると考えます。