長計策定会議・技術検討小委員会(3)質問と意見

長計策定会議・技術検討小委員会(3)質問と意見

2004年8月30日
原子力資料情報室 伴英幸

1. 予備的な評価結果について

 直接処分ではC-14で被ばく線量が評価されていますが、以下の質問がありますので、もう少し詳しく解説してください。コスト比較で必要となるTRU廃棄物処分費用に関する考察の参考にしたいと考えるからです。

1.1)有機C-14と無機C-14の違い

 第2回小委員会資料第2号の中の予備的な核種移行評価のCase1-1では、有機C-14の線量は無機C-14の50倍近い(P.44)。線量のピークである処分後約5000年(溶解開始後4000年)時点での溶解量は、有機C-14が無機C-14の約10倍となるので、線量ピークの違いは有機C-14と無機C-14の移行挙動の違いと考えればよいのでしょうか?また、緩衝材中での分配係数は、有機C-14は0(遅延係数=1)ですが、無機C-14も0.00006(遅延係数=1.23)と非常に小さいので、有機C-14と無機C-14の移行挙動の違いは、主に天然の岩盤中での違いで決まっていると考えればよいのでしょうか?

1.2)今回の評価結果と2000年3月のTRU報告書の評価結果の比較について

(ここで2000年3月のTRU報告書とは、『超ウラン核種を含む放射性廃棄物処理処分の基本的考え方について』原子力委員会バックエンド対策専門部会および『TRU廃棄物処分概念検討書』核燃料サイクル開発機構をさす)

1.3)C-14とI-129の線量の大小関係

今回の評価では有機C-14が支配核種とされており、I-129の約150倍の線量を与えています(第2回資料第2号p.44 Case1-1)。これに対して、TRU報告書では支配核種はI-129で、線量の最大値はC-14の約10倍大きい。これは今回、構造材のC-14を有機として扱ったことに起因すると考えられますが、今回の条件で仮にC-14をすべて無機として扱った場合、C-14の最大線量はI-129の何倍程度になりますか? 線量のピークが今回の評価は約5000年で、TRU報告書は約2万年なので、半減期5730年のC-14の線量は6倍程度の違いはありますが、差はそれ以上のようです。逆に、TRU報告書の条件で、C-14の有機と無機を区別して扱うと、結果はどう変わるのでしょうか?

1.4)TRU廃棄物処分におけるC-14とI-129のインベントリ

 上記の質問と関連して、C-14とI-129のインベントリは、今回の報告(直接処分)とTRU報告書(再処理後の廃棄物)とで、違いがありますか? 違いがある場合には、その理由を(処分量の量的違いおよび環境放出量など)について教えてください。

1.5)I-129による線量評価

 今回の評価では、I-129の線量が約3E-5mSv/yrであるのに対して、TRU報告書では条件にもよりますが、1E-3mSv/yr程度と数十倍高くなっています。TRU報告書では全量が瞬時溶解するとしており、瞬時溶解量は今回より25倍大きいので傾向としては合っているようですが、TRU報告書の線量のピークは2万年後になっており、約5000年でピークになる今回の評価より岩盤の条件はむしろ良いようにもとれます。今回の評価とTRU報告書を比較するときに、瞬時溶解割合や岩盤中の移行挙動の関係はどう考えればよいのでしょうか?

2. 核燃料サイクル諸量の分析について

 第6回策定会議資料第4号「基本シナリオの核燃料サイクル諸量の分析」では、2050年までと2150年までの期間について定量的に分析するとしています。2050年までの定量的分析というのも相当に無理がありますが、2150年というのは、定量的分析に耐え得るとは思えません。その無理は、前提条件に顕著です。第6回策定会議で橋本委員ともども、廃炉とリプレースの現実性を見込んでいない原子力発電設備容量は仮想的なツールとしても余りに非現実的と指摘しましたが、そうした指摘をするまでもなく、そもそも「2030年まで58GWeまで伸び、その後は一定で推移」という仮定は、どう見ても無理があります。
 「基本シナリオの核燃料サイクル諸量の分析」の4ページ「各基本シナリオの分析ケース」では、全量再処理の説明として「全ての使用済燃料を再処理する」とあり、他方、5ページの「プルサーマル継続」ケースの説明では「使用済MOX燃料については貯蔵する」と書かれています。これは矛盾しているのではないでしょうか。5ページの説明では使用済みMOX燃料は超長期の貯蔵をすることになり、しかも貯蔵後どうするのかが、基本シナリオ(4)の「当面貯蔵」以上に曖昧になります。現実的な政策シナリオではなく「政策評価を行うためのツール」なのですから、使用済みMOX燃料も全量再処理するシナリオとしなくては筋が通らないと思います。
同上資料6ページのFBR移行シナリオについては、「ツール」としての有効性の範囲内でもちろん結構ですが、示されたグラフのように高増殖FBRと低増殖FBRが導入される根拠なり説明なりが、もう少し必要だと思います。なお、このシナリオのコスト評価をするには、データが決定的に不足しています。それはどうするのでしょうか。
 使用済みMOX燃料の貯蔵・再処理・ガラス固化体処分・直接処分について、使用済ウラン燃料のそれらとは違ったコスト評価が必要となります(参考1に、両者の使用済燃料の発熱量の違いを図示します)。繰り返しになりますが、その試算を行うべきであることを再度強調しておきます。また、使用済み燃料中間貯蔵施設の必要箇所数として示された数は、現状の貯蔵容量とその増強計画、新設原発の貯蔵容量等を考慮すると、明らかに過大です。
海外でもリプレースの事例がないとおもいます(あれば具体的に示してください)が、さらに、新規立地や増設の困難あるいはリードタイムの長期化、老朽化に伴う設備利用率の低下などを考えると、現実的には、原発の発電への寄与は将来減少せざるを得ないと考えます。この現実に沿うシナリオも加える必要があると考えます。

3. 資料開示

 直接処分のコスト試算を行ないつつありますが、このデータが完全に公開されることが必要です。費用の積み上げに関して、少なくとも原子力環境整備センター98年報告「将来の使用済燃料対策の検討(その3)報告書」ならびにコスト等検討小委員会に出された再処理事業やMOX燃料加工事業など(ガラス固化体の費用に関する記述は異質なものの混在でなんら参考にならない)程度の内容の開示を求めます。
また、ガラス固化体の処分費用に関しても同様な内容の開示を求めます。技術検討小委員会に提出されたものでは、積み上げ費用を比較・検討することが出来ません。参考として、総合エネルギー調査会原子力部会バックエンド対策ワーキンググループの第5回~第7回までの資料を開示してください(第5回98年8月24日開催、第6回同年9月9日開催、第7回同年10月2日開催)。

参考1)使用済みウラン燃料と使用済みMOX燃料の発熱量比較
(どちらも燃焼度は45,000MWd/t)