MOX燃料輸送に対する共同アピール(和訳)
共同アピール
原子力資料情報室(東京)、グリーン・アクション(京都)、グリーンピース・ジャパン
(和訳・原文は英語)
日本のプルトニウム計画は不経済かつ危険で日本のエネルギー計画に弊害をもたらし、核拡散を助長させる
日本はヨーロッパからのMOX燃料(プルトニウム・ウラン混合燃料)輸送を中止し、輸送ルート沿い国々へのリスクをなくすべきである
65体のMOX燃料(プルトニウム・ウラン混合酸化物)に含まれた約1.7トンもの兵器転用可能のプルトニウムが日本時間の2009年3月6日未明、日本に向けてフランス・シェルブールから英国の輸送船で出航した。これは史上最大量のプルトニウム輸送となる。日本の使用済み核燃料からプルトニウムをフランスで抽出して加工したMOX燃料は日本の九州電力、四国電力、中部電力3社の原発で使用されることになっている。
■ 危険かつ不経済で破綻した日本のプルトニウム計画
この輸送は、破たんした日本のプルトニウム利用計画のつじつまを合わせるものに他ならない。当初の計画では、1970年ごろに高速増殖炉を商業化し、このために本格的な商業規模の再処理工場を稼動させるというものだった。
しかし、今日までに高速増殖炉の商業化は10回(合計年数80年)にわたり延期され、商業化目標は2050年にまで先送りにされている。2.3兆円かけて建設された六ヶ所再処理工場の本格稼動は、これまでに16回延期されており、同工場の技術的な問題により稼働時期は不透明だ。[1999年より順次実施され2010年までに16~18基で利用するというプルサーマル計画も実現の見通しはない。]
50年以上もの開発期間と膨大な費用をつぎ込んだにもかかわらず、日本のプルトニウム計画は今電気を生み出しておらず、電球一つ点灯させていない。日本では、この危険で不経済な核燃料サイクルに反対する署名が数百万集められた。
■ 輸送は航路沿いの国々の安全保障と環境を脅かす
日本の政府と電気事業者は、MOX燃料利用計画にこだわり続けている。日本はヨーロッパに約38トンものプルトニウムを保持しているため、プルサーマルが進めば海上輸送が繰り返され、輸送ルート沿いの国々を危険にさらし続けることになる。
MOX燃料輸送の安全措置に関わる所轄官庁である国土交通省は、「我々は輸送物に対して全責任を持つというわけではない」という。そして、「一元的には安全の責任は事業者が負っている。電力会社は、原子力発電所の安全確保と情報公開に対して努力しているように、輸送に関しても同様に努力するように、と繰り返し言っている。」. (国交省海事局検査測度課長森雅人。2009年2月13日国会議員レクにて。森氏は国交省の輸送容器の安全性を確認する責任者.)
高速増殖原型炉「もんじゅ」で使用するため、1992年にプルトニウム1.5トンがフランスから日本に輸送された。その輸送に関して数十ヵ国が懸念を表明したものの、結果的にこれは無視された。さらに1999年、2001年と続けてヨーロッパからMOX燃料輸送が行われ、ルート沿いの諸国から大きな反対を受けたが、これもまた無視された。しかし、輸送された燃料は、日本の原発事故、データ改ざんスキャンダル、MOX燃料使用に対する地元反対などにより、日本ではまったく使用されていない。
2009年1月26日、日本の最大野党所属の議員を含む国会議員20名の連名により、日本の安全基準を満たしていなければMOX輸送は進められるべきではないとする書簡が国土交通省に送られた。省内に内在する懸念もろともこの書簡を無視した国交省は、議員団の署名15名が提出された時点の数時間後には承認をむりやり完了させてしまった。
そして現在、輸送ルート沿い国々はさまざまな懸念を抱いているが、フランスと日本の対処は依然として見えない。
●輸送ルート沿いの諸国の海上所轄省庁と協議のうえ作成すべき緊急事態用の対応計画の欠如。輸送には適正な保障・賠償体制がともなわず、燃料海没などの場合の回収・引き上げ義務について白紙状態
●MOX燃料の輸送容器に求められる試験条件は次の順番で:
9メートルからの落下試験、800度Cで30分間 の耐火試験、水中15メートルに8時間浸ける水没試験、水中200メートルで一時間の水没試験により核分裂連鎖反応が起こらないこと(危険物船舶運送及び貯蔵規則の第81条)。日本政府の法令基準は、IAEAの 放射性物質安全輸送規則および関連国際輸送安全規則等にもとづいている。これは長距離海上輸送を想定したものではない。航海中に事故が発生した場合は、過去の事故例を見るかぎり、これらの基準では貨物の安全を保障できない。より高熱で30分以上続く火災事故が起こるかもしれない。そして、航路の大部分は2000メートル以上の深海である。
●仏アレバ社製造のこのMOX燃料は、武装した英国輸送会社(PNTL)のパシフィック・ヘロン号とパシフィック・ピンテール号により輸送される。フランスから日本まで2万キロにおよぶ外洋航海だが、警備体制については3月4日から3月5日にかけてラアーグ?シェルブール港間で行われた陸上20キロの輸送時より大幅に緩和される。
●MOX燃料に含まれるプルトニウムは米国起源のウランから抽出されたものであり、いわば「米国の旗」が立ったものだ。米政府は、今回の輸送上の安全保障計画を非公式に検討している。今後の輸送について航路沿いの諸国は、米オバマ政権に対し米連邦議会監督のもと、より透明な方法で安全措置を検討するよう要求すべきである。それによって、安全保障上の観点から今後輸送は続けるべきでないことが明らかになる。
核拡散
IAEAはプルトニウム8キログラムで核兵器の製造が可能とし、また保障措置ではMOX燃料は核兵器製造に「直接利用」することができ、厳しい防護策を要すると分類している。アレバ社は、今回輸送される民生用プルトニウムの核拡散の危険性を正しく伝えていない。私たちがエルバラダイIAEA事務局長宛に「これら核計画が世界に与える安全保障上のリスクをアレバ社や関係国政府に改めて指摘するよう」求めた公開書簡について、3月2日、業界情報誌プラッツが報道した。(Platts Nuclear News Flashes, Monday, March 2, 2009)
アピール
日本のプルトニウム計画は不経済かつ危険で日本のエネルギー計画に弊害をもたらし、核拡散を助長させます。
私たちは日本政府と電力会社に対し、今回および今後のプルトニウム(MOX)輸送をやめ、輸送ルート沿いの国々にリスクを強いることをやめるよう要請します。
今回および今後のMOX燃料輸送の想定ルートにあたる国々に対し、私たちとともに輸送の終結を要請するよう呼びかけます。
今回想定される輸送ルートは、希望峰・南太平洋まわり、南米まわり、もしくはパナマ運河経由の三つ。
これまで日本の核燃料輸送に反対した地域機構は、CARICOM(カリブ共同体)、ACP(アフリカ・カリブ海・太平洋諸国グループ)、SIDS(小島嶼開発途上国)、PIF(太平洋諸島フォーラム)、および南米諸国。
MOX燃料輸送に関するCNIC英語ホームページ
cnic.jp/english/topics/cycle/MOX/shipment/shipment.html
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